不妊の原因と妊娠しやすくする9の方法 / 妊活と身体づくり

[公開日]2014/06/18[更新日]2015/05/01

私たちは皆妊娠という段階を経て生まれてきました。しかしいざ妊娠を望んだ時、それが簡単な事ではない事を知ります。不妊に悩む事は珍しい事ではありません。一方自分の問題として抱えてみると、大変な重荷に感じます。

妊娠と不妊治療

不妊に悩む、もしくは不安を感じている女性が多い一方、妊娠に対する知識や取組に不足がある女性が多い事も事実です。これだけ不妊が増えているにも関わらず、その知識の偏りに驚くという医療現場の声もあります。ここでは不妊の原因に対して知識を深めるとともに、妊娠に向けた基本的情報をご紹介します。


妊娠は奇跡?


ヒトが妊娠する可能性は、1ヶ月で25%。ある医師は、「不妊が普通の状態と考えるぐらいでちょうど良い」と言います。妊娠に至るまでには様々なハードルがあり、妊娠という事自体がある種「奇跡」と言っても過言ではないと。しかしバッターと同じように、チャレンジし続ければ塁に出る事ができるわけです。

ところが、現代の女性は、この簡単ではない妊娠をより困難にする要因を抱えています。その1つが「晩産化」です。出産年齢の中心層は30~34歳へと、1970年から5歳ずつ上昇しました。35歳以上の高齢出産に当てはまる方は5人に1人です。また不妊症の原因となる子宮筋腫や卵巣嚢腫といった病気なども増加しています。

不妊を経験している夫婦は7.5組に1組程度と言われます。その中で2割は原因不明です。決して珍しくない不妊という状態。しかも必ずしも道が開けるわけではない中で悩みを抱える女性が抱える重荷は大きなものです。少しでも結果を出しやすくする為には、どのような方策があるのでしょうか。

現代女性が抱えるハードルをクリアするために


妊娠を困難にする要因として、ご自身の置かれた環境を1つとする方も少なくないと思います。多くの女性が学業、そして仕事に励み、出産に向かう年齢はどうしても遅くなってしまいます。加えて仕事をしながら妊娠に臨むことは精神的、身体的にそのハードルを上げる事は言うまでもありません。

ここで女性にとって辛い事は、「晩産化」を余儀なくされる状況であっても、生物として妊娠適齢期が遅くなる事はないという事実です。女性の生理に合わない出産事情の中で、なんとかやりくりしながら妊娠という希望を叶えていかなければいけないのが、今の実情ではないでしょうか。

ご自身の希望を叶えるためには、ご自身の身体を自己責任で整えていかなければいけません。不妊の原因の中には、医療で克服できるものと、それ以外の原因不明のものがあります。医療以外のアプローチが、ご自身の妊娠する力を高める事があります。まずは自身で解決できる原因とできない原因をしっかりと把握しておきましょう。

不妊の原因は様々


妊娠への第1歩は病院で解決できる不妊要因の有無を知る事です。不妊の原因には大きく分けて「器質性不妊」と「機能性不妊」があります。「器質性不妊」は不妊の原因が明らかです。器質性不妊の多くは病院での治療によって解決する可能性があります。一方「機能性不妊」は不妊の原因が不明で、医学的な治療方法が無いケースです。

器質性不妊の場合、病院での治療が第一の有効策となります。ここでご紹介する自分で妊娠する力を上げる方法ももちろん後押しとなる事はありますが、まずは検査を受け医学的な解決に臨む事が先決です。

検査を受ける事に不安や抵抗を感じる方も多くいらっしゃいます。一方、妊娠とは様々な要因が全てそろって成り立つことです。医学で解決できる事は早めに取り組むに越したことはありません。後述しますが、様々な妊娠の為の医療がある一方、母体の体内時計を止める医療だけは今のところないのです。不安の中でも早めに1歩を踏み出す事が大切です。

病院でできる不妊に対する取り組み


病院で検査をする場合、検査結果が全て出揃うまでに約3か月かかるのが一般的です。器質性不妊に限っても、不妊の原因が1つでない事が少なくありません。女性側、男性側、そして両方が原因となるケースも有ります。

器質性不妊がわかった場合、子宮や卵管などの不具合や病気の治療から始めます。さらに必要性が判明した場合には、タイミング法という自然妊娠に近い方法だけでなく、人工授精や体外受精といった更なる治療ステップに進む場合があります。母体が高齢の場合などにもこれらの治療ステップに進む場合があります。

検査によって医療だけでは解決できない機能性不妊がわかった場合や、器質性不妊において自身の妊娠する力が弱い事がわかった場合、後でご紹介する方法が功を奏す場合もあります。しかしその話の前に、器質性不妊についてもう少し詳しくご紹介します。知識が不十分という方は不妊にまつわる様々な要因を知ることから始めて下さい。

女性の器質性不妊とはどんなもの?


女性側に発見されやすい器質性の原因として多いものが「卵管性不妊」です。全体の約10%を占めます。受精の場となる卵管の内側は細い部分で約1mm。詰りや癒着が起こりやすく、受精の妨げとなります。このような卵管性不妊の主な原因は「子宮内膜症」や「クラミジア」による卵管炎です。検査や比較的簡単な治療で解決するケースも有ります。

排卵に問題があるケースは全体の約20%を占めています。排卵異常の原因は、ホルモン分泌の異常や、間脳、下垂体、卵巣機能の異常といったものがあります。また「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)」という卵胞がたくさん育つものの排卵が行われないという病気である場合もあります。

子宮に問題があるケースは約15%です。子宮筋腫や子宮内膜ポリープ、子宮奇形などといった場合があります。これら以外に、女性だけでも下表にある様々な器質性不妊原因があります。耳慣れない言葉が多く難解かもしれませんが、詳しくは後述しますので、まずはどういった要素が不妊に絡むのかを知る事からスタートしてください。
分類内容
子宮
内膜症
子宮内膜や類似組織が子宮内腔以外の臓器に発生、増殖する病気。着床障害や排卵障害に繋がる。
排卵
障害
下記の原因などで卵胞が育たない、または上手く排卵できない。
・中枢性(脳の視床下部と下垂体)の排卵障害
 →排卵を促すホルモンの指令系統の障害。
・卵巣機能低下
 →脳からの指令があるにも関わらず卵巣が反応しない症状。
・多胞嚢性卵巣症候群(PCOS)
・黄体機能不全
 →黄体からの卵胞ホルモンと黄体ホルモンの分泌不全。
・黄体化未破裂卵胞(LUF)
 →卵胞が排卵しないまま卵巣に残り黄体化する。
・高プロラクチン血症
 →乳汁分泌刺激ホルモンプロラクチンが過剰で妊娠していないのに排卵障害等を起こす。
卵管性
不妊
卵管閉鎖・癒着・炎症などで精子、卵子、受精卵の移動が困難になる。
着床
障害
受精卵が何らかの子宮の異常で着床できない。
・子宮筋腫
 →子宮の内側にできる良性の腫瘍で、子宮と卵管のつなぎ目にできた場合などには受精卵
  の輸送障害、粘膜下筋腫や筋層内筋腫の場合は着床障害を起こすことがある。
・子宮腺筋症
 →子宮内膜症が筋層の中に入りその部分の内膜が増殖する。
・子宮内膜ポリープ
 →増殖した子宮内膜の一部がポリープになったもの。大きさや部位により着床の妨げとなる。
・子宮奇形
 →子宮に奇形があるため着床しにくくなる。
・黄体機能不全
 →黄体からのホルモン分泌不全により子宮内膜の分泌変化が完全に起こらない状態。
・子宮内膜癒着
 →子宮内膜での癒着による着床障害。流産や帝王切開手術時の傷や炎症が原因になること
  がある。
頸管
因子
子宮の入り口の頸管に受精を妨げる因子がある。
・子宮頸管粘液不全
 →子宮頸管粘液の分泌不十分。排卵誘発剤長期服用によって発症する場合もある。
・抗精子抗体
 →精子を遺物だと判断し抗体をつくる物質を女性が持っている。


卵子の老化という原因


上記の不妊原因以外に、卵子の老化という要因があります。社会が変わっても女性の妊娠適齢期が変わらない1つの大きな要因です。女性が卵巣に保管している卵子の元、「原子卵胞」は生まれた時の保持数が最多で、年齢と共に減少していきます。1日当たり30~40個減少し、決して増えることはありません。

卵子は「生産」されるものではなく「保管」されているものです。保管数は25歳で20~30万個、35歳を超えると2万5千個に減ると言われています。問題は数だけではありません。年月と共にそのクオリティも下がってしまいます。厳密にいうと「減数分裂」が正常にできなくなり、受精や受精卵の着床の困難、流産等に繋がりやすくなってしまいます。

高齢出産では卵子の質が重要に


女性が子供を産む為の体内時計は、ライフイベントに合わせて遅くなってくれる事はありません。確かに卵子の若さには個人差があり、高齢出産が可能だった女性もいます。しかし確率としては低い事をきちんと踏まえた上で、妊娠へと取り組まなければいけないのが現状です。

最終的に妊娠するために必要なのは1つの卵子と精子です。数が減ったとしても質を高めるよう自身でもできることがあります。卵巣内の「原子卵胞」は排卵までの間、「卵胞刺激ホルモン」の指令で成熟し卵子となります。卵子の質はこの成熟段階での環境を整える事で決まります。

後でご紹介する生活習慣の工夫によって、血流やホルモンバランスを整える事で卵子の質を高めるアプローチをすることができます。

妊娠のための100%は無いからこそ


妊娠の為にはまず「器質性不妊」の原因を早期発見する事が大切なのは先述の通りです。しかし原因が明らかになって、タイミング法や体外受精に取り組めば100%妊娠できるかと言えばそうでもありません。例えば26~34歳までの女性の体外受精による妊娠率は25%です。自然妊娠より妊娠率は高まりますが、100%ではないのです。

「機能性不妊」を含め、妊娠にまつわる不確定要素はまだ科学的な解明を得ていません。そこで、医学的には「未病」の状態にアプローチする東洋医学的な手法が注目されています。特に鍼治療の有効性は西欧諸国でも注目を浴びています。体外受精において、6割以上の比率でその成功率を上げたというのです。

このような数字が示す事、それは母体そのものの総合的な健康が妊娠力を上げるという事です。特に冷えや自律神経の乱れが妊娠へと大きく影響します。これが鍼治療において、妊娠しにくい人ほど効果を上げるに至った理由ではないかと考えられています。こういった改善は鍼だけでなく生活習慣の改善が大きく効を奏す分野です。

妊娠しやすい身体を作る為には?


妊娠しやすい身体、と言えば卵巣機能の向上やホルモンバランスの整いを真っ先に思いつく方が多いのではないでしょうか。これらの要素は一朝一夕では手に入りません。どうすれば子宮や卵巣、ホルモンの状態を良くできるのかを知って、自身でも妊娠しやすい身体を作っていきましょう。例えば、子宮や卵巣機能の向上について考えてみましょう。

女性はちょっとした体調の変化で生理が止まってしまう事が少なくありません。何故生殖機能はすぐにストップしてしまうのでしょうか。生命維持に関係の無い生殖器官は、体内で最もダメージを受けやすい場所です。食事の不足、血流悪化による冷えなどの影響を真っ先に受けるのが生殖器官なのです。

その為過労やストレスで女性が最初に疾患にかかりやすい臓器が生殖器官です。妊娠しやすい身体にするためには、身体全体が充分に健康になる必要があります。そこで初めて生殖機能の働きも改善できるのです。では具体的にはどのような事に取り組んでいけばよいでしょうか。

冷えと妊娠の密接な関係


卵巣機能やホルモンバランスに悪い影響を及ぼすもの、それが冷えです。低体温や冷え性の女性は少なくありません。冷えはホルモンの正常な働きを阻害する要因になります。それはホルモンが血流で運ばれるためです。血流が悪い状態が続くと、ホルモンがターゲットとなる部位に到達して働くことができなくなってしまいます。

またお腹や足が冷えると反射で子宮が収縮し、血流や新陳代謝が悪くなり機能が落ちてしまいます。子宮や卵巣は身体の奥にあり、表面から温める事が難しい場所です。血流は全身のポンプ運動であり、運動不足などによる慢性的な循環不全は、細かく枝分かれした血管の先にある子宮内膜への血行も悪くします。

逆に身体に冷えが無く子宮が暖かいと、子宮内膜が厚くなります。子宮内膜の厚さは着床率、妊娠率、出産率と大きく関係しています。子宮内膜は赤ちゃんを迎えるベッドと言われる部分です。子宮内膜が厚い程、着床率が上がります。

妊娠しやすい人のお腹とは


東洋医学では「腹診」というお腹の状態を触る診察を行います。妊娠しやすい人のお腹は柔らかく弾力があり、お餅のようにふっくらしているそうです。一方妊娠しにくい人は硬さや、圧力による痛みがあるそうです。

この硬さが示すのは内臓の血流の悪さです。内臓にコリがある、つまり内臓の動きが悪く血液循環が悪くなっているというサインです。冷えやすい子宮を温めるには、内臓全体の動きと血流を良くし、芯から温まるよう身体を導かなければいけません。

ご紹介する様々な生活習慣の工夫で血流を改善し、冷えを改善する事で卵巣や子宮を元気な状態にできるようアプローチしてみましょう。具体的な方策に入る前にもう1つの大事なポイント、自律神経についても少し知識を持っておきましょう。

自律神経と妊娠の関係


ご自身でアプローチできる妊娠しやすさへの一手として、自律神経と妊娠の関係にも注目してみて下さい。自律神経の働きは、ホルモン分泌や冷えに関係します。自律神経の乱れが女性ホルモンの乱れへと繋がるのです。

ホルモンバランスが乱れると子宮は機能の低下もしくは過度の向上という不具合を起こします。無排卵や、受精卵のベッドである子宮内膜が育たないといった不妊症状に繋がるのです。自律神経は、交感神経と副交感神経のバランスで成り立っています。子宮や卵巣がきちんと機能するためには、副交感神経が適切なタイミングで優位になる必要があります。

副交感神経が優位、というのは睡眠時のようにリラックスした状態です。逆に緊張時やストレス時に働く交感神経が優位な状態だと、血圧や心拍数が上がり、消化器や皮膚への血流はセーブされます。その結果全身の血流は悪くなり、当然生殖器官への血流も落ちるのです。自律神経が乱れがちな女性が妊娠しにくくなる1つの理由がここにあります。

ホルモンの連絡経路を知ってバランスを整える


お話しした自律神経や女性ホルモンの関係について、視覚的に把握してホルモンバランスを知るヒントにしましょう。自律神経を司る脳の「視床下部」「脳下垂体」という部位は、同時に女性ホルモンやストレスに関わる副腎皮質刺激ホルモンなどの司令塔にもなっています。相互に影響し合うのは以下のような連絡経路システムがあるからです。

不妊治療と妊娠しやすくするサプリ

ここでまず知っていただきたいのが、司令塔である「視床下部」や「脳下垂体」のエネルギー配分には優先順位があり、女性ホルモンは後回しにされる存在だという事です。脳のエネルギーそのものが少なくなっている、もしくはストレス処理など他のホルモン分泌にエネルギーが奪われている場合などには女性ホルモンの分泌に支障が出ます。

もう1つは、ホルモンの連絡経路は一方通行ではなく、フィードバックがあるという事です。フィードバックを行う卵巣に不具合があると、脳もその影響を受けて不調をきたすことがあります。ホルモンバランスの調整は脳と卵巣、双方の健康があって成り立つもの。女性の健康が不安定になりやすい要因にはこの連絡経路の仕組みが関係しています。

生活の工夫で妊娠力を上げる


冷えや自律神経といったポイントは生活によって改善する事ができます。逆に如何に優れた医学やその他の治療も、生活が変わらない限り中々妊娠する力を上げる事が出来ない側面があるのです。仕事やその他の要因で生活や自身の健康状態を変える事が難しいと感じている方もいらっしゃるかもしれません。

しかし知識を持つ事、そして意識をする事だけでも変化は訪れます。妊活自体がストレスになってしまうと、良い結果に繋がりにくいということがあります。実践的なアプローチはもちろん大事ですが、ご自身のストレスや生活がどう妊娠に関わるのかを俯瞰的に考える事は、良い結果への第1歩になるかもしれません。

では以下に具体的な改善方法をご紹介していきます。ご自身の状態とあてはめながら、できるところから改善策に取り組んでみてください。

①自身の冷えをチェックして習慣改善


既に十分に冷え性や低体温の自覚がある方は次のステップへ進んでください。冷えの自覚の無い方の中で、身体を冷やす習慣がある方は、そこに改善ポイントが潜んでいるかもしれません。例えば以下のような事に該当する方です。

・季節を問わず薄着である
・冷暖房無しでは過ごせない
・湯船に浸かる習慣が無い
・運動不足
・寝相が良すぎる
・身体を冷やす珈琲、アイス、ビールなどが好き

こういった項目にあてはまる方は知らず知らずに身体を冷やしている、また冷えていることに自覚が無いことが考えられます。先述の通り、お腹や足を冷やすと反射で子宮は収縮し、血行が悪くなります。まずはこれらの習慣を温め習慣に変える事から始めてみて下さい。

②総合的に妊娠力を下げる「冷え生活」を改める


冷えの根本的な原因となる生活習慣には以下のような要素があります。

・不規則な生活
・睡眠不足
・ストレス過多
・運動不足
・食事のアンバランス

慢性的な冷え性や低体温には、一時的な要因ではなく慢性的な生活習慣が関わっています。もちろん身体を冷やす習慣や血行を悪くする締め付ける服装などの要因もありますが、根本的な上記の生活上の要素を改善しないとなかなか冷えは治りません。そしてこれらの要素は当然自律神経にも大きく関わり、ホルモンバランスにも悪い影響を及ぼします。

上記の要素が生活にある背景には、仕事など致し方ない理由があるかと思います。しかし妊娠しやすさを向上する上で欠かせない改善点である事を認識しておいて下さい。これらの要素が妊娠しやすさにどう影響するのかを更に解説します。

③不規則な生活を改善すると妊娠ホルモンが分泌される


女性の排卵機能は自律神経が司る内分泌の調整と大きく関わっています。自律神経に大きな影響を与えているのが生活の規則性と睡眠です。自律神経が整うためには交感神経と、副交感神経の役割分担がスムーズでなければいけません。通常、活動時間である昼間に交感神経が優位になり、休息時間である夜間に副交感神経が優位になります。

優位になるべき側のスイッチが適切なタイミングでスムーズに入る事で、自律神経が影響するその他の機能の働きも健康に保たれます。しかし、生活が不規則で規則的なスイッチの切り替えができない状況に置かれると、自律神経の働きがおかしくなります。本来人間の生理に合った、昼動いて夜休むというバランスが乱れると、自律神経も乱れるのです。

例えば夜遅くまで残業や付き合いで仕事モードな場合にも、自律神経は乱れます。遅くとも夜12時までに眠りにつける事、眠りにつく前段階から休息モードで副交感神経を優位にできる事、これらは自律神経の働きを正常に保つために大切な事です。妊娠に必要なホルモンは副交感神経が優位な時に分泌されます。

④睡眠不足解消は冷えとホルモンの乱れの解消に


睡眠不足は身体の冷えを呼びますが、妊娠に関する害はこれだけではありません。これまでの話で出たように、女性ホルモンは卵巣が元気ならば正常に分泌されるわけではありません。ホルモンの分泌には脳の「視床下部」や「下垂体」という部分が司令塔として関わっています。脳のこれらの機能を元気に保つために欠かせないのが睡眠です。

脳の休息はノンレム睡眠によって得られます。このノンレム睡眠時にはストレスの解消や妊娠に必要な成長ホルモン分泌も行われます。成長ホルモンは「卵胞刺激ホルモン」や「黄体形成ホルモン」等の分泌に関与するものです。卵胞細胞はこれらのホルモンによって健康な卵子へと育つ為、睡眠によって成長ホルモンを分泌する事が重要です。

⑤睡眠の質が上がるとは妊娠力が上がる


脳の休息にもやはり自律神経が関わっています。睡眠時に上手く副交感神経が優位に切り替わらないと、睡眠の質が落ち、脳が充分な休息をとれません。睡眠ホルモンとして知られている「メラトニン」は睡眠の質を高めるだけでなく、卵子への働きもある事がわかっています。

メラトニンは卵胞内で抗酸化物質として働き、卵子の元を守る働きがあります。メラトニンの人工的な摂取で受精率や妊娠率が上がったという研究結果があります。メラトニンの材料は鬱病との関わりでも知られる「セロトニン」という神経伝達物質です。

セロトニンとメラトニンは自律神経に連動して活性化します。交感神経が優位な時はセロトニン、副交感神経が優位な時はメラトニンが分泌されます。昼間セロトニンが正常に機能する事で夜間のメラトニン分泌が促進されます。昼間の過ごし方でもメラトニン分泌量と睡眠の質にアプローチすることが可能です。

⑥妊娠力を高める睡眠習慣にこだわる


睡眠が妊娠に及ぼす効果をまとめると以下のようになります。

・体温を上げ、冷えを解消する
・視床下部や脳下垂体を元気にしてホルモンバランスを整える
・成長ホルモンによって卵子を健康に育てる
・メロトニンによって卵子の元を守る

睡眠は身体の健康を保つ基本であるばかりではなく、妊娠する力を高めるプラスαさえ与えてくれるものなのです。お話しした要素を総合して妊娠しやすい身体を作る睡眠習慣を定めるならば、ノンレム睡眠の時間がメラトニン分泌のタイミングに合う「午後10時から午前2時の間に眠りについている事」と言えます。

この睡眠習慣、これまで散々言われてきた良い睡眠習慣そのままです。できるならすでにやっていると思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし妊娠にどれだけ大きな効果を持つかを知った上で、改めて工夫の余地が無いかチャレンジしてみて下さい。昼は太陽の光を浴び、夜は光を抑えるだけでもメラトニン分泌を促すことができます。

⑦ストレスが妊活に与える悪影響をきちんと自覚する


ストレスと不妊の関係は、先にご紹介したホルモン連絡経路にヒントがあります。ストレスを感じると副腎皮質刺激ホルモンが働きます。ストレスに対して自身を守る大切な機能です。しかし同じ「視床下部」「脳下垂体」が司る機能であるため、先述の通り女性ホルモン分泌は後回しにされてしまいます。

また、ストレスは交感神経を優位にするスイッチになります。ストレスを感じ続けている方は、休もうと思っても副交感神経に切り替える事が難しくなるのです。休むべき時に休まらない事は、自律神経の乱れに繋がる事をお話ししました。睡眠の質も落ちてしまいます。

ストレスの難しいところは、本人にさえ自覚の無い所で交感神経が優位な休まらない状態を作り出す事です。物理的には規則正しい生活を送り、十分な睡眠をとっていたとしても、ストレスによって自律神経が乱れている事があります。不妊治療をストップしてそのストレスから解き放たれた時に妊娠できたというのはよく聞く話です。

⑧妊活のストレスマネジメント


妊娠しやすい身体を望むならば、身体だけでなく心もほぐすことがとても大切です。心身共に健康であって初めて真の健康が得られるという、東洋医学の考え方が妊娠に結びつきやすいのも、このためかもしれません。まずは自身のストレスを自覚する事、自身の心の健康があって初めて妊娠の準備ができる事を考えてみて下さい。

ストレスが妊活に与える悪影響を回避するためには、ストレスに身を晒す時間をなるべく短くすることが大切です。ストレスによって交感神経が優位になるような状態を短くすることで、妊娠力への悪い影響を抑えたいのです。具体的には、副交感神経優位なリラックスの時間を多くし、更にはストレスの元を忘れている時間を長くすることが大切です。

簡単な事ではないかもしれませんが、あなたのホルモンや卵子への具体的な影響を知った上では、気の持ちようが変化するかもしれません。妊娠したいという想いがストレスになっている場合は、妊活への取り組み方を変えて良い結果を得るきっかけになるかもしれません。

⑨一石三鳥?運動で血行と卵巣機能を上げる


身体、そして心の冷えの改善にも、運動は欠かせないポイントです。筋肉を動かして血流のポンプ運動を促す事は脳にも冷えにも効果的です。もちろん身体を冷やさない服装や入浴なども冷え改善になりますが、運動は内臓の血流、延いては子宮や卵巣の血流へダイレクトに良い効果をもたらすことができます。特に足を使った有酸素運動がお勧めです。

細かい毛細血管が集まる子宮と卵巣は、全身の血液循環が大きく影響します。全身の血行改善が病気や機能不全を回避に繋がりやすい臓器です。目安として少し汗ばむ位から息切れせずに話ができる程度の運動を、1日1時間できれば理想的です。運動の種類は、ウォーキングなど足を使うものにすると、冷え性の方の足のむくみも改善するのでお勧めです。

また歩行は骨盤の歪みが自然にとれる動きです。内臓の緊張を緩めて動きを良くする効果、女性ホルモンが関わる仙骨のずれを調整する効果も期待できます。一石三鳥ともなるこのような運動は、冷えがありホルモンバランスの悪い方に是非取り入れていただきたい習慣です。

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◇参考文献・WEBサイト一覧
厚生労働省 統合医療情報発信サイト
日本化粧品技術者会
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