【歯科医が教える】赤ちゃんの歯磨きはいつ頃から始めるのが正解?
[公開日]2017/03/06
この記事は、歯科医師の方に執筆していただき、アンチエイジングの神様チームで編集しております。
我が子が虫歯にならないように、赤ちゃんのころから歯磨きをさせようと必死になっていませんか?歯科医師である筆者は、多くのお母さんから"赤ちゃんの歯磨き"について相談を受けてきました。そのたびに、虫歯をつくらないことの大切さや正しい歯磨きの重要性ばかりを説明していました。
しかし、自身にも子供が生まれ、「歯磨きをすることだけが子育てではない」と気づきました。赤ちゃんの歯磨きはもっと気楽なものであり、赤ちゃんとのふれあいの1つであることを知ってほしいと願っています。
今回は筆者の過去の反省点もふまえ、歯科医師としての知識と自身の子育ての経験をもとに、赤ちゃんの歯磨きについての考え方や具体的な方法について解説していきます。
実は、赤ちゃんの虫歯の原因は歯磨きよりもダラダラ食い
近年は予防意識の高まりとともに、子供の虫歯も減ってきています。それでも虫歯を作ってくる子供の多くは、歯磨き不足というより食生活に問題があるケースがほとんどです。
具体的に言えば、時間を守らずに好きなときに好きな物を食べさせることです。先にも述べたように、この時期に大切なのは生活のリズムを整えることです。
食生活に関していえば、決められた時間に一定の量だけ食べさせることが、歯磨きよりも効果的な虫歯予防になります。
意外よね、必死になって歯磨きすることよりも、ごはんのリズムを決めることで虫歯予防になるなんて。
歯科医がおしえる赤ちゃんの歯磨きQ&A
赤ちゃん用の歯ブラシならどれでもOK
歯ブラシは赤ちゃん用のヘッドが小さく、ブラシも柔らかいものを使用しましょう。最近は指サックタイプのものや、毛が柔らかいシリコンでできた赤ちゃん用の歯ブラシも販売されています。まずは慣れることが大切ですので、ママにも赤ちゃんにも使いやすいものを選べば問題ありません。早く歯ブラシに慣れてもらうには、歯ブラシを使用するほうが望ましいですが、どうしても嫌がるようであれば、濡らしたガーゼや綿棒で歯を拭う方法でもよいでしょう。
歯磨き粉は特に必要はなし
歯の汚れは歯ブラシでこすり落とすことが基本です。また歯磨き粉は洗剤ではないので、歯磨き粉自体が汚れを落とすわけではありません。そのため歯磨き粉を使う必要は特にありませんが、歯磨き粉を使用したい場合、まずは自分で唾が吐き出せる、またはうがいができるようになってから使用するようにします。
また、子供用の歯磨き粉には、歯を強くするフッ素が配合されています。歯磨き粉は研磨剤や発泡剤の入っていない子供用の歯磨き粉を選ぶようにしてください。
今は、いろんな味のついた歯磨き粉が売られているから、子供によっては歯磨きを楽しむきかっけにもなりそうね。
歯磨きは回数よりも毎日行うことに重点を置く
歯磨きを特に嫌がらない赤ちゃんであれば、離乳食の回数に合わせて毎食後行うと習慣づけにも効果的です。しかしこの時期は1日1回でも良いので、毎日必ず行うことに重点をおきましょう。歯磨きにかける時間も、歯がしっかり磨けることにこしたことはないのですが、どうしても難しいのであれば、5秒でも10秒でもいいので、毎日口の中に歯ブラシをいれる時間を作ってみてください。
虫歯予防のため、というよりも赤ちゃんが歯磨きを嫌がらないことがポイントね。
赤ちゃんの歯磨きはいつから?どうやって?
歯磨きをはじめるタイミングは?
歯磨きは「歯が生えたら」すぐにはじめるのがよいでしょう。またそれ以前から準備段階に入ると、実際開始するときににスムーズに行えます。歯が生える前(生後6か月ほど): 歯磨きの準備をはじめる
まだ歯が生えてない時期に特別なにかを行う必要はありません。ただ首がすわりだした時期(4~6か月ごろ)、これからはじまる歯磨きに向けて準備を整えておくと、実際の歯磨きがスムーズに始められます。具体的には頬や口の周りに触れる回数を増やしたり、指に清潔なガーゼを巻いて口の中を拭ったりして、口元や口の中を触れられることに慣れるようにします。
歯の生え始め(6か月~):スタートは歯ブラシを口に入れるところから
赤ちゃんはまず下の前歯に2本歯が生えます。下の前歯の裏には唾液の入り口があり、常に唾液で汚れを流してくれます。したがって下の前歯は虫歯になりにくいです。この時期は汚れを落とすことよりも、まずは歯ブラシが口に入ることを慣れさせる期間だと思ってください。
前歯が生えそろう(1歳~):歯にブラシを当てて磨く
歯が上下4本そろう頃は、離乳食も普通食に近づき、食べるものもバラエティ豊かになってきます。この時期から食べ物に注意しないと虫歯ができ始める子供もいます。特に上の前歯は虫歯になりやすいですから、この頃あたりから歯ブラシを歯にしっかり当てて磨くように心がけます。
奥歯が生えはじめる(1歳6か月~):自分で歯ブラシを持っても仕上げ磨きは必要
奥歯が生えだす1歳半ごろになると、自分で歯ブラシを持ちたがる子もいます。そのような場合は自主性を大切にし、子供の用の歯ブラシを持たせると良いでしょう。しかしそれはまだマネごとにすぎません。最後は大人が必ず仕上げ磨きを行ってください。また今後生えてくる歯に備えて、デンタルフロスの練習をし始めても良い時期です。
赤ちゃんが歯磨きを嫌がったら
赤ちゃんが歯磨きを嫌がるのは当たり前だと開き直ることも大切
ママのお腹から出てきたばかりの赤ちゃんにとって、この世界のすべては知らないことだらけで、まして歯磨きをされる理由もわかりません。いきなり、口にわけのわからないものを入れられて、怖がったり嫌がるのは当然です。それでも赤ちゃんは日に日にいろいろなことを覚え学んでいきます。はじめは嫌がっていても、それをママが優しく教えてくれることで、赤ちゃんも次第に安心していくものです。
歯磨きのはじめは遊びの延長から
歯磨きははじめは遊びから入ります。ママもそのつもりで歌を歌ったり、話しかけるなどして遊びの一環として工夫してみてください。筆者の場合、子供の歯磨きを楽しくするために、さまざまなフレーバーの歯磨き粉を日替わりで使用していました。
最近は子供向けの番組や動画など、歯磨きを楽しくさせるツールがたくさんあるので、それらを利用するのもよいでしょう。
歯磨きに時間をかけない 無理強いはしない
流動性のあるものしか口にしない時期はさほど歯も汚れません。したがって歯磨きにそれほど時間をかける必要はなく、2歳ごろまでは15秒もあれば十分です。また嫌がる赤ちゃんに無理強いするのは逆効果です。虫歯にしたくない気持ちはとてもよくわかるのですが、そうであるならば、食習慣を見直すなどしたほうが、今後の成長のためにもメリットは大きいでしょう。
歯磨きだけが虫歯予防ではないことを理解する
この時期に虫歯になる危険が潜んでいるとすれば、それは歯磨きではなく、食生活に問題があることがほとんどです。虫歯を作り出すのは糖分、つまり砂糖です。甘いものは子供がもっとも喜ぶ食べ物なのでつい与えがちですが、どんな食べ物であれ、だらだら食べさせることは子供の成長にとって何1つ良い影響を与えません。
もし歯磨きがうまく行えないのであれば、シュガーコントロール(砂糖の量や時間を調節する)ことを意識することをお勧めします。
虫歯菌に感染する機会をなるべく減らす
生まれたての赤ちゃんの口に、虫歯菌はいません。ではどこから虫歯菌に感染するかといえば、周りの大人の口からです。具体的には大人と同じ食器や箸を使って赤ちゃんに食べ物を与えることで虫歯菌に感染する機会を増やしています。この時期になるべく虫歯菌が口に入らないようにすることも、実は虫歯予防としては効果的です。筆者も子供が3歳になるまでは、食器や箸、スプーンなどは大人とは別にしていました。
とはいえ、周囲に大人が多いほど実践も難しいでしょう。周囲の理解を得られるのであれば、これらの方法を実践することも虫歯予防の1つとなります。
歯科医師が教える赤ちゃんの歯を磨く方法
「仕上げ磨きはいつまで?」という質問をよくされますが、仕上げ磨きは大人の歯が生えそろうまで、具体的には小学校中学年から高学年までは行う必要があります。
赤ちゃんの歯磨きはその時期に備えて、ママも仕上げ磨きのコツを取得する時間だと思ってください。
動きが不安定な時期は、抱っこをしたまま歯ブラシを口に入れる
1歳ぐらいまでは赤ちゃんの動きも不安定なので、ママのひざに座らせて横に抱っこをした状態で歯ブラシを口にいれましょう。この時、片方の腕で頭や背中をしっかりと支え、ママの顔がちゃんと赤ちゃんに見えるように行ってください。
安定してきたら仰向けにし、頭を膝の上にのせて覗き込むように行う
1歳前後になり動きも安定してきたら、子供を仰向けにし、頭をひざの上にのせ、上から覗き込むようにして歯磨きを行います。空いている手で下あごを優しく固定するとなお良いでしょう。そして話しかけたり歌を歌いながらすると、子どもに安心感を与えます。上手く口を開けてくれなくても怒ったりイライラする必要はありません。子供と楽しい時を過ごす時間であることを忘れないでくださいね。
赤ちゃんの歯ぐきはデリケート、力は入れないこと
赤ちゃんの歯ぐきは薄く、とてもデリケートです。力を入れすぎるとすぐに血がでます。赤ちゃんの歯磨きは、ブラシの先で歯を軽くなでる程度で十分です。また力が入りすぎないように、ペングリップ(鉛筆の持ち方)で歯ブラシを持ちます。この方が赤ちゃんの小さな歯も細かく磨くことができます。上の前歯を磨くときは、小帯(ヒダ)に気をつけて磨くこと
上の前歯は下の前歯より虫歯になりやすいので、しっかりと歯ブラシをあててもらいたいのですが、注意すべき点が1つあります。それは前歯の間に小帯(しょうたい)とよばれるヒダがあるからです。この小帯に歯ブラシがあたると赤ちゃんはとても痛がります。
上の前歯を磨くときは上唇を優しく持ち上げて、小帯(ヒダ)にブラシが当たらないように気をつけましょう。
赤ちゃんに早めの歯磨きが必要な3つの理由
歯磨きのある生活リズムを覚えさせる
歯が生え、離乳食が始まる6か月あたりから赤ちゃんの生活も少しづつ変化していきます。この時期に大切なのは、朝起きる、決めれられた時間に決められた回数の食事を摂る、夜になったら寝る、という生活リズムを体で覚えさせることです。
歯磨きもその流れの1つです。「なぜそうしなくてはならないのか?」という疑問ではなく、まずは「1日を過ごすとはそういうものだ」ということを赤ちゃんもママもリズムとして体感していくことのほうが大切です。
3歳までに歯磨きの習慣を身につけさせるため
歯磨きを毎日する理由は、虫歯や歯周病を予防するためです。赤ちゃんの場合、食生活によほど大きな問題がない限り、2歳あたりまでは虫歯はできません。しかし、2歳の後半あたりから虫歯になる子は増えてきます。この時期に備えて歯磨きの習慣を身につけさせることが、赤ちゃんの歯磨きの重要なポイントです。
歯磨きは大切な親子のふれあいの時間
皆さんが子供の頃、お母さんやお父さんに歯磨きをしてもらった経験のある人はどれぐらいいるでしょうか?実は筆者にその経験はありません。しかし自身が小さなわが子の歯を磨く時、ひざの上に頭を乗せ顔を覗き込み、目を見つめたり頬にふれたりする間、とても温かい気持ちになったことを覚えています。そして実際にこのような時間をあとどのくらい共有できるのだろうかと考えました。
子供にとってもそのような親とのふれあいは心を豊かにしていきます。この時期の歯磨きは、虫歯にさせないために頑張るものではなく、このような親子のふれあいを大切にする時間でもあります。
まとめ ママが楽しまないと赤ちゃんも歯磨きを楽しめない
何も知らない赤ちゃんにとって歯磨きは不快なものです。その歯磨きをママがイライラしたり無理強いをすれば、ますます歯磨き嫌いになってしまします。
3歳ぐらいまでは食生活に気をつけていれば、虫歯になることはほとんどありません。赤ちゃんの歯磨きは3歳以降、虫歯ができやすくなる時期にはじめる本格的な歯磨きの準備期間です。
大切なのは習慣づけること。ママもほんの少し力を抜いて、歯磨きを通して赤ちゃんとのふれあいの時間を大切にしてください。
《編集:安藤美和子》
サプリメントアドバイザー、化粧品検定一級、薬事法管理者の有資格者チームの管理人。化粧品開発・プロモーションの実務経験を活かし、雑誌・WEBメディアの執筆/ディレクションを行う。
サプリメントアドバイザー、化粧品検定一級、薬事法管理者の有資格者チームの管理人。化粧品開発・プロモーションの実務経験を活かし、雑誌・WEBメディアの執筆/ディレクションを行う。