双子出産者が解説！バニシングツインとは、原因予防策はあるの？不安との戦い方まで解説

バニシングツインという言葉を聞いたことがありますか？

双子にしか起こらない現象であり、母胎の中で双子の片方だけが消えてしまうというものです。

筆者は一卵性双生児の母ですが、妊娠した時に初めてこの言葉を知り、次の健診までをとても不安な気持ちで過ごしました。

自分にできることは、ただ安静にして祈ることしかなかったからです。

せっかく双子を授かったのだから、無事に二人とも出産したい！

そのためには、バニシングツインについて正しく知ること。対処法について、気をつけることについても知る必要があります。そして、残念ながらバニシングツインが起こった場合についても知っておいて欲しいと思います。

バニシングツインとは？その原因は？

バニシングツインって何？

医学的には「双胎一児死亡」と言います。

バニシングとは、英語でvanishの現在分詞ですが「突然消える、見えなくなる」という意味があります。その名の通り、双子のうち片方が消えてしまうという現象なのです。

片方の赤ちゃんが何らかの原因で死亡したけれど、もう一方の赤ちゃんは発育しているので自然に子宮内に吸収されてしまうため、消えたように見えるのです。

単胎の場合、流産すればお腹には誰もいなくなってしまいますし、何らかの処置が必要ですが、双胎の場合は片方が消えてしまっても、もう片方が残っている場合がほとんど。言うなれば、二人の赤ちゃんのうち、一人の赤ちゃんを流産してしまっている状態です。

バニシングツインはどうして起こるの？

残念ながら、そのメカニズムははっきりとはわかっていません。

ただ、妊娠12週（3ヶ月）くらいまでの初期流産は、ほとんどの場合赤ちゃん側の原因です。

妊娠初期は、心臓や脳など人間の主要器官が作られる時期で、染色体異常のためにうまく器官が形成されず、ヒトの身体として成り立たなくなるのです。命として育たず、残念なことに流産となってしまいます。

---

染色体異常は、卵子と億単位の精子が出会い受精した時点ですでに決定しています。

妊娠後の母親の行動や飲食物は無関係です。

これが双子であっても片方の赤ちゃんに起こる訳で、防ぐことができません。元々育たない受精卵だった、というしかないのです。そして、一卵性か二卵性によってもバニシングツイン後の危険度が違ってきます。

バニシングツインの発生率

バニシングツインは10％程度の確率で起こると言われており、単胎妊娠の場合の流産確率10～15％と比較しても、そんなに珍しいことではありません。

とても悲しいことですが、流産を経験した女性は意外に多いのです。

ただし、双子のバニシングツインでは、片方は影響なく育っていくことの方がほとんどですので、悲しさを乗り越えて、もう一人の赤ちゃんを無事に生んで育てていくことを考えていきましょう。

筆者も、妊娠したかな？という最初の受診で「双子だね、経過はわからないよ」と言われました。

どういうことか尋ねると「2つとも育つかもしれないし、1つだけしか育たないこともある」と言われて、ものすごい不安に陥ったことは、今でも忘れられません。

帰宅してから色々調べて、初めて「バニシングツイン」という単語を知りました。とにかく単胎なら安定期と呼ばれる5ヶ月を過ぎるまでは、心配でたまりませんでした。

バニシングツインの珍しい事例

ある日、身体に異変を感じて病院へ行った彼女は、脳に腫瘍が見つかり、手術で取り除くことになりました。

ところが、その手術で取り出されたものは、腫瘍ではなくヒトの歯や髪の毛だったというのです。

これは、奇形腫と言われ、漫画「ブラックジャック」のピノコも奇形腫を手術によって人間に"組み立て"て誕生したという設定になっています。

当然、ピノコの事例は漫画の世界のことで、現実には完全体になるヒトの奇形腫が見つかったことはありません。

このアメリカ人女性の場合は、奇形性双生児と言われており、一卵性双生児が受精卵の分裂で完全に分かれず、さらにバニシングツインによって片方がもう一方に取り込まれてしまうことによって起こったと考えられています。

つまり、双子の身体の一部が結合したまま片方が流産し、もう片方に取り込まれ、生まれた方の身体の中で身体の一部分が育つということです。

ちなみに、身体の一部が結合したまま、二人とも生まれてくると、「ベトちゃん・ドクちゃん」や「アビー&ブリタニー」のような結合双生児（シャム双生児）となります。

---

彼は15歳の時、背中に痛みがあり病院へ行きました。当時の診断は脂肪の腫瘍。良性であることから放置されました。

ところが、20年後、再び背中に痛みがあったため、今度は切開手術に。すると、そこにヒトの手や足のある胎児が見つかったのです。

「宇宙人の仕業では？」というウワサも飛び交ったようですが、医師は双子の胎児であると断定しました。

これは、胎児内胎児というもので、バニシングツインが起こったのに、子宮内に取り込まれず、もう片方の体内に胎児のまま残ってしまった状態と言われています。

バニシングツインの時期や兆候・症状は？

バニシングツインが起こる時期は？

単胎の初期流産と同じく、妊娠初期の15週までに起こります。赤ちゃんの心拍が確認できるのは平均して8～9週なので、実はその前にバニシングツインが起こっている可能性も少なくないとか。

流産経験のある人やバニシングツインの知識がある人は、心拍が確認されるまでえんえんと不安を抱えて過ごす期間になることでしょう。

しかし、前述したように、バニシングツインは初期流産と同じく、赤ちゃんの染色体異常が原因で起こります。

もちろん、今までの通りに過ごしてはよくありませんが、あまりに気にしすぎてストレスを溜めてしまうと、赤ちゃんにもよくありませんので、ゆったりと自然に任せましょう。妊婦健診で心拍が確認されていれば大丈夫です。

バニシングツインの兆候とわかる方法

バニシングツインは、母体が気付かないうちに起こっていることもあります。

特に妊娠初期の場合は、最初にエコーで胎嚢（赤ちゃんの袋）が2つ見えたのに、次の健診では1つしか見えなかったということも。

他に兆候がある場合は、単胎の流産と同じなので、いくつか例を挙げておきます。

大量、長い期間続くという場合は、痛みなどがなくても受診してみましょう。

特に4ヶ月以降の出血はバニシングツイン以外の異常の可能性もあるので、念のため受診することをおすすめします。

生理痛のような痛みが10分間隔、5分間隔というように周期的に来て、しばらく横になっても治まらないなら病院に行ってみましょう。

---

バニシングツインに予防法はあるのか？

バニシングツインは、片方の赤ちゃんを流産してしまい、自然に子宮に吸収されることであるとご説明しました。

妊娠初期の流産は、赤ちゃん自身の染色体異常であることが大多数であるため、予防する方法はありません。

母親側の黄体ホルモン分泌不足や、子宮内膜の機能不全、子宮筋腫や子宮内膜症なども流産の原因となり得ますが、バニシングツインのように片方だけ流産することはありません。

それでもやりたい！バニシングツイン予防策

予防法なんてない！と言われても、やっぱり用心してあげたいのが親心ですよね。

筆者も、双子とわかった瞬間に「仕事も趣味もやめて、家で安静にしておくように」と指示されました。
趣味の方は割と激しめの踊りを習っていたため理解できますが、仕事の方は続けていられると思っていました。

当時もライターをやっていましたが、今決まっている仕事以降はすべて断って、家で過ごすようにしていました。

---

それでもやっぱり「せっかく双子を授かったのに、一人いなくなるなんて嫌だ」という不安と心配はずっとありました。

バニシングツインの医学的に有効な予防策はありませんが、やった方がいいこと、しない方がいいことはありますのでご紹介します。


可能なら仕事も趣味も、旅行も友人との食事会もやめて、家でゆったりと過ごすようにしましょう。

夫やその家族が「心配しすぎ、妊娠は病気じゃないんだから」と言っても、きちんと説明して納得してもらいましょう。

もちろん激しいスポーツや過労は厳禁です。睡眠不足やストレスも溜めないように生活しましょう。

性生活も禁止ではありませんが、できる限り穏やかに。興奮すると子宮収縮してしまうので、赤ちゃんに影響を与えないとも限りません。


たばこを吸っていたなら、赤ちゃんのためにやめてください。妊娠中にたばこを吸うことは、流産や早産の危険が高くなります。

また、家族に喫煙者がいたら、ベランダで吸ってもらうなどして、たばこの煙も吸わないように気をつけましょう。


妊娠初期は、人間の主要器官が作られる時期です。赤ちゃんの発育不足から流産になることもあるので、この時期に葉酸を積極的に摂りましょう。ただし、双子だからと2倍摂る必要はありません。

バニシングツイン後の対処法

バニシングツインの後はどうなる？

これは、妊娠初期に起こるか、中期以降に起こるかどうかでずいぶん違ってきます。

妊娠16週くらいまでにバニシングツインが起こった場合は、自然に子宮に吸収されるため、特に処置をしません。

これは、もう一人の妊娠を継続させるために必要なことです。初期のバニシングツインは一卵性でも二卵性でも、もう一人が元気なら特別な処置がいらないという点では同じです。

しかし、中期以降で片方が亡くなってしまうと、子宮内に吸収されることなく、そのまま胎児が残ってしまいます。

この場合、一卵性と二卵性では対処の仕方が違ってきます。

バニシングツインが起こった出産後、子どもに影響はある？

もはや都市伝説のような「左利き」の話は有名ですが、障がいが起こるというウワサもあり、心配ですよね。資料と筆者の経験から類推してみましょう。

左利きの人は一卵性双生児のバニシングツインが起こった生き残りである……というウワサがありますが、本当でしょうか？

これは、ミラー・ツインと言われるもので、双子の双方で利き手が左右に分かれていたり、つむじの巻き方が片方が右巻、もう片方が左巻と、鏡に映ったように左右対称になる場合があることを言っているのでしょう。

二人に分かれた場合、医学的には受精卵の分裂が受精後9～12日前後で起こると考えられています。

ごく稀にですが、すべての臓器が逆になる場合もあり、見た目だけでなく、人格の形成、生活嗜好や睡眠パターンまでもが鏡像的になる場合があるそうです。

しかしながら、全部の一卵性双生児がそうであるとは限りません。

ちなみに、筆者の息子は一卵性双生児ですが、二人とも右利きです。もちろん臓器も普通ですが、二人は好みも性格も全く違います。ただし、目に見えない部分は鏡像のようとは言いがたく、確かめる術がありませんね。

---

一卵性双生児のバニシングツインについて、ダウン症との関連を指摘する研究者がいるようです。

ダウン症候群とは、22対ある染色体のうち、21番染色体が3本あることから発症する先天性のものです。

一卵性なら当然二人ともダウン症であるはずで、片方がバニシングツインになったからといって、残った片方がダウン症になるとは言えません。また、逆にダウン症候群が一卵性双生児になる確率が高いというデータもありません。

よって現時点では、バニシングツインとダウン症の関連性は特定されません。二卵性の場合にはそのような指摘自体がないようです。

バニシングツインが起きても自分を責めないで

筆者も、バニシングツインの可能性を指摘されてからというもの、健診の度にちゃんと二人いるか心配でたまりませんでした。

幸いにも、筆者はバニシングツインとはなりませんでしたが、残念ながらそうなってしまった場合、どうしたらいいのでしょうか？

双子に限らず、妊娠には流産という危険性は誰にでもあります。冒頭でも述べたように、全妊娠の10～15％は初期流産をしますし、妊娠に気付かないうちに、もしくは双子と気付かないうちに流産となってしまうケースも合わせると、もっと数が多いのかも知れません。

しかしながら「よくあることだから」とは済ませられないのが母の心。

大きな喪失感と拭いようもない悲しみは、消えることがありません。バニシングツインの場合は、もう一人がお腹で育っているため「もう一人いるからいいじゃない」という心ない言葉をかけられ、苦しむ人もいます。

もう一度言いますが、初期流産は赤ちゃんの染色体異常によって起こるもので、母親の生活態度や行動のせいではありません。

特にバニシングツインの場合は、もう一人を無事に出産しなければならないという大仕事がまだ残っていますので、「自分のせいだ」「あの時のアレがいけなかったんだ」と思い悩んでストレスを溜めないことです。

消えてしまっても「確かに存在した」ことを、身をもって知っているのはお母さんだけ。忘れることなく、無事に生まれて来た子にも大きくなったら話してあげるといいと思います。

まずは必要以上に不安がらないことが大切

双子を妊娠したものの、途中で片方だけが消えてしまうバニシングツイン。これは、決して「双子だから」起こることではなく、双子の片方だけを初期流産してしまうことだという、正しい認識を持ちましょう。

特に双子妊娠の初期では「～かもしれない」という言葉をよく医師から言われると思いますが、必要以上に不安がらず、お腹の赤ちゃんたちの生命力を信じてあげてください。

単胎妊娠の初期流産と同じで、赤ちゃんの染色体異常で起こることですので、予防する方法もありません。

しかし、母親のせいでないことだけは確かです。もしもバニシングツインが起こってしまったとしても、周りの言葉や態度に過敏に反応せず、正しい知識で悲しみを乗り越えてください。

現在では妊娠初期に双子ということがわかるようになり、バニシングツインに気付いてしまうようです。

昔はその存在すら知られず、去ってしまった赤ちゃんです。その悲しみは癒えることはないでしょうが、確かにお腹にいたこと、きょうだいがいたことを知ることは、悪いことではないと思うのです。

筆者が双子を授かった頃は、調べまくったにも関わらずほとんど資料がありませんでした。情報がないので、不安で不安で仕方ありませんでした。バニシングツインについて正しく知ることで、少しでも皆様の不安が解消されることを祈っております。