【体験者が解説】死別後の再婚は裏切りではない!幸せへ前向きな一歩を踏み出すために
[公開日]2016/12/19[更新日]2017/06/14
筆者は1999年大晦日に最初の夫を亡くしました。
その後2001年に再婚、3年後に離婚し、2007年に再々婚して双子を生み、これも残念ながら離婚して、現在はシングルマザーです。
死別を乗り越えるのに、よい方法などありません。
自分で悲しみや彼への愛情を浄化できるまで、時間が癒やしてくれるのを待つしかないのです。その癒やしが、仕事だったり子どもだったり、新たな恋愛だったりするでしょう。
難しいのは、恋愛して再婚となった場合、亡夫に対して罪悪感を覚えてしまうことです。
この記事では以下のことについてまとめています。
筆者の体験を通して、再婚が決して亡夫への裏切り行為ではないことを、お伝えしたいと思います。
筆者の体験談「もう二度と結婚したくない…」
愛する人との別れは辛いものです。こればかりは、経験した人にしか分からない痛みだと思います。どうあがいても、その苦しみから逃れるには、時が癒やしてくれるのを待つしか方法はありません。
まず、筆者が夫を亡くした時の話をさせていただきます。
風邪ひとつひいたことのなかった夫が…
最初に結婚したのは25歳の時でした。
23歳の頃からつき合っていた6歳年上の夫とは、もちろん初婚同士で、お互いの育った家庭環境も似通っており、双方の両親とも快諾してくれた結婚でした。
当時私はライターとして独立して2年目、夫とは出版系の会社にいたことで知り合ったのですが、お互いに自由で、経済的にも独立した家庭でした。まだ若いこともあり、子どもは当分考えていませんでした。
病気発症までは風邪ひとつひいたことなかった夫。ところが、結婚1年半で病魔が突然夫を襲ったのです。
「クッシング症候群」という非常に珍しい病気でした。日本でまだ50例ほどしかないと告げられ、ショックを隠せませんでした。簡単に言うと、胸に腫瘍があり、そこから副腎皮質ホルモンが大量に産出されるため、身体に負担をかけて症状が出るというもの。ガンの一種だと考えれば、その腫瘍を手術で取れば根治できるということでした。
再発から亡くなるまでは坂を転がるように…
1回目は胸郭という、肋骨の奥の部分にある腫瘍を取る手術をしました。胸を開く大手術でしたが、何とか乗り越え、症状も徐々に回復していきました。
ところが、毎月定期検査に行っていたにも関わらず、1回目の手術から1年半後にまた顔がむくみだしたのです。
検診の日ではないけれどとにかく病院に行って!と懇願する私に負け、夫は病院へ行ってくれましたが、やはり即入院。それからは坂道を転がるように病状が悪化していきました。
まず、鎖骨辺りに腫瘍の転移が見られ、骨にも転移している可能性を指摘。そして、試験的なものではあるけれども、内服薬との併用治療を行いました。
医師より「年内持たないかもしれない」と言われました。
あと1ヶ月半しかありません。私は個室に移ったその日から病院に泊まり込みました。
しかし、夫は大晦日の朝に脳出血を起こしてしまいました。
そのまま、意識が戻ることはありませんでした。治るつもりで入院したのに、治療の甲斐もなく、一時帰宅もできないまま、21世紀を迎える2時間前に他界してしまいました。
医師の宣言通り、年を越せずに亡くなり、冷たくなった夫を自宅へ連れて帰りました。お通夜やお葬式は夫の実家で行うことになっていたのですが、帰りたがっていた家にどうしても一度連れて帰ってあげたかったのです。
葬儀準備中"亡夫"の文字で悲しみを実感
お正月早々のお葬式となりましたが、たくさんの方に集まっていただき、私は初めて喪主となったのです。28歳での未亡人。
まるで、誰かの人生を傍観しているようで現実味がありませんでした。
伴侶が亡くなるって、よく聞く話だけど、まさか自分に起こるなんて!
泣いてはいるのですが、どこか夢心地で、ふわふわとしていた記憶があります。
葬儀の準備の中で葬儀社の方に「会葬のお礼」の文面を確認してくれと言われました。文面を確認するために、軽く声に出した文章を読みました。
「本日は、亡夫のために……」
"亡夫"
この言葉に「あぁ、本当に亡くなってしまったんだ」と改めてお腹のそこからよじれるような悲しみが沸き上がったのを、今でも鮮明に覚えています。
もう二度と結婚なんてしない
大晦日の朝、脳出血で意識をなくした時、筆者は胃が内側からひっくり返るんじゃないかと思うほどのショックを受けました。幸い病院だったため、看護師さんが胃薬を持ってきてくださいました。
そこからお通夜、お葬式と続く数日間は、怒濤のように忙しく、あぁ、お葬式というものは、生きている者のためにするのだなぁと思ったものです。
わざと忙しくして、どっぷりと悲しみに沈ま込んでしまわないように。そのために必要な儀式なのだなと、悟りにも似た境地にもなりました。
火葬する間、彼の祖母と思い出を談笑することもできたり、ちゃんとお腹が空いたり。彼が煙と骨になっていくのを、徐々に受け入れることが、虚しくもあり寂しくもあり、生きている自分が不思議でもありました。
お葬式の最後に、喪主の挨拶をするためマイクの前に立った時、彼の両親が並んで立っているのが見えました。
最愛の長男を失って、その悲しみはいかばかりかと思いつつ「あぁ、義父母にはちゃんと伴侶がいていいな」と…。
今思えば不謹慎なことを思ったものです。
「自分の両親もちゃんと伴侶がいる」「私だけが一人になってしまった」
「もう二度と、結婚なんてしない」と思いました。
死別再婚の難しさ
死別と離婚の違い
一番の違いは、そこにある「愛情」ではないでしょうか。離婚には夫婦生活が継続できない何らかの事情があり、ほとんどの場合「愛情」がなくなっていることでしょう。ところが、死別は特に二人の関係に何も問題はないのに突然別れることになってしまうのです。特にまだ再婚が考えられる若さで死別してしまった場合、次の恋愛をすることさえ難しいこともあるでしょう。
さらに、離婚はお互いに悪い面を見せ合って別れますが、亡くなった人は、記憶とともにどんどん美化されます。若いまま、変わらないまま思い出の中にいる彼と、生きてそこにいる別の人を比べると見劣りしてしまうのかもしれません。
死別・再婚がなぜ難しいのか?
亡くなった夫を、忘れられないだけでなく、他の恋をすることが罪悪感となってしまうことで、再婚へと繋げるのが難しくなってしまうケースがあります。「自分だけ幸せになっていいのだろうか」
「彼の妻のままでいたい」
などという思いもあるでしょう。
亡くなりかたにも違いがあると思います。朝元気だったのに、突然交通事故などで還らぬ人となってしまうという死別は、病死と違って心の準備が整っておらず、失った方のショックと喪失感はなお大きいと思われます。
また、亡夫との間に子どもがいる場合はもっと複雑で、再婚相手が亡夫の子どもをどう受け入れるかも問題になってきます。相手にとっても、死別と離婚は大きく違うのですね。子どもにとっても、亡くなった父親への思い入れがあるでしょう。
新しいお相手に事情を話した場合でも、亡くなった方には勝てないため、理性ではわかっているけど消化できない感情が、嫉妬となって表れる場合も。実際にこの世にいないからこそ、闘いようがなく、お互いにやり場のない感情となってしまいます。
死別後の再婚で気をつけるべきポイント
死別後、時間が解決してくれることはたくさんあります。「もう二度と結婚しない」と思っても、時間はその頑なな気持ちを上手に癒やしてくれるのです。
しかし、初婚の場合とは違ったいろんな問題が起こることも確か。死別後の再婚で、気をつけた方がいいポイントとはなんでしょうか?
お墓・仏壇の問題
お葬式の後、宗教にもよりますが、大抵の日本家庭では七日ごとの法要を省略し、次の法事は四十九日ということになります。この日に納骨することがほとんどで、この時までにお墓の問題を決めなければなりません。この時、まさか将来の再婚のことを考えたりはしないでしょうが、養子など特別の場合以外は、夫の実家のお墓に入れるのが一般的でしょう。
筆者も今もお墓参りには、夫の実家まで行っています。お仏壇は、お位牌を2つ作ってもらい、夫の実家と私の家とに置いていました。
筆者が再婚する際に、再婚相手に対して気になるため、お寺にお位牌だけ引き取ってもらい、仏壇は今も家に置いて、毎日お茶を捧げています。
思い出の品の整理
無理に処分しなくてもいいというのが筆者の考えです。いつか時がきて「もういいかな」と思えるまで、大切にしてください。
ここで無理に処分したりすると余計に気持ちに区切りがつかなくなると思います。
もし形見分けで、両親など亡夫の身内に言われた場合は、譲ってもいいなと思えるものから、選んでもらいましょう。
再婚は死別したパートナーへの裏切り?
残された方も辛いけど、愛する家族を残して死んでいく方も辛いでしょう。しかし、生きている者は、次の恋愛をする時「自分だけ幸せになっていいのだろうか?」と考えがちです。実際に筆者もそうでした。
しかし、自分が幸せになることは、自分の両親だけでなく、亡き夫の両親をも安心させることに繋がっているのです。
亡き夫の両親も「自分の息子が亡くなって苦労をかけている」と、気に病んでいるのです。一抹の淋しさも感じることでしょうが、実はホッと肩の荷を下ろしたような気持ちになっているのではないでしょうか。
再婚は決して裏切りではなく、生きていく上で起こる必然なのです。再婚してもしなくても、幸せに生きることが、一番の供養だと思います。
亡夫の親との姻族関係は?
夫が亡くなったら、自動的に婚姻関係はなくなります。しかし、その両親との親族関係は継続します。
もし再婚しても、姻族関係を終了する届けを役所に提出するまで、その姻族関係はなくならないのです。意外に知らない人が多く、この縁を切らないことで借金返済や扶養の義務が自分にかかってきてしまうことも。
特に提出の期限もなく、義父母の了承もいらないため、再婚をする際は、姻族関係終了の手続きをした方が良いでしょう。
夫の遺産は受け取ることができます。子どもがいた場合も、子どもと義父母との親族関係は継続されます。
再婚する時、結婚式をあげる?
死別からどれくらい時間が経っているか?相手が初婚か?子どもがいるか?など、いくつかの問題がネックになってくると思いますが、そもそも、死別後に再婚することは、悪いことをしている訳ではありません。あまり派手に行うと、前夫を知っている人から批難を受けそうと思うなら、再婚相手と話し合って、着地点を見つけましょう。
ちなみに、筆者は二度目の再婚の時はいわゆる地味婚で入籍と親戚同士の食事会のみ、三度目の時は挙式、披露宴とも行いました。
自分の姓はどうしたらいい?
死別の場合、特に何もしなければ、そのまま夫の姓を名乗ることになります。婚姻関係は消滅しているのに、不思議ですよね。しかし、案外知られていないことに、女性は姓を1つ前までしか遡れないことになっているのです。
つまり、最初Aという姓になり死別、再婚してBという姓になり離婚。旧姓に戻したいと思っても、最初のAという苗字にまでしか戻れないのです。
再婚するという時に、離婚のことを考える人は少ないでしょうが、万が一のために、一度「復氏届」という手続きをして旧姓に戻してから再婚した方がいいでしょう。
子どもがいる場合は、家庭裁判所で手続きをすれば、自分の戸籍に入籍して同じ苗字にすることができます。
筆者は、実はそんなことは全然知らずに、再婚相手に義理を立てるつもりで、復氏してから再婚したのですが、後になって旧姓に戻ることになり、本当に助かりました。
子どものケア
お父さんを失って、辛いのは子どもも同じです。父親への思慕は、死別の場合余計に断ち切りがたいものかもしれません。
これは離婚からの再婚でも同じですが、お子さんが反対するなら、まずは見送るのがいいと思います。それが待てない再婚相手なら、縁がなかったと思えませんか?
子どもにとって、新しいお父さんを迎えるというのは大きな変化です。物心つかない小さいうちならまだしも、子どもが自然に受け入れられるまで、待ってあげてください。
再婚したら、新しい弟妹ができるかもしれないというのも、希望になるかもしれませんね!でも、恋愛をやめた方がいいということでは決してありません。
結婚相手がパートナーとの死別体験がある場合に気をつけるポイント
誰しも、恋愛相手の過去は気になるもの。それが「死別」という重いものだったら尚更です。お相手が、死別からどのくらい経っているか、また病死なのか突然の別れだったのかによって、その立ち直り方にも差があると思われます。
実際に死別を経験した筆者から言いますと、必要以上に気を使う必要はないということです。特に何も申し出がなければ、普通に接して欲しいというのが正直なところではないでしょうか。
ただし、家に仏壇があり位牌がある、お墓参りに行くなど、亡夫の影がちらほらした時に、どう対処したらいいのかが難しいところでしょう。
こちらからの希望を言えば「死別した事実ごと受け止めて欲しい」ということです。次の恋愛や結婚に進んでいるということは、死別の辛さを乗り越えているということだと理解してください。
必要以上にやきもちを焼いたり、心配する必要はありません。亡くなった方に対して嫉妬するのは、逆に器の小ささを露呈してしまいますので、丸ごと受け止めてあげてください。
また、お墓参りに行くな!と、引き止めたりしないで、優しく送り出すか、一緒に行くことができれば最高です。亡き人に敬意を抱き、今後は自分がこの人と幸せに生きていきます、見守ってくださいと報告しましょう。
NGなのは、「お前のせいで前のダンナは死んだ」という意味合いのことを言ったりしたりすること。例えケンカ中の売り言葉だったとしても、相手に付けた傷は一生消えません。
やたらと関係を急いだり、結婚を急かすのもよくありません。深い懐で、相手の人生ごと受け入れてあげてください。
思い出を心に留め、前へ進んでいくために
残念なことに、人の記憶は風化します。
どんなに覚えておきたくとも、正確な記憶はどんどん変化していきます。
だからこそ、亡くなった人の思い出は美しかったり、また辛さだけが強調されたりするのでしょう。それでも、生きていかねばなりません。
筆者は28歳で未亡人になりました。
かなり忙しい仕事と、彼と一緒に育ててきた猫がいたので、何とか悲しみに沈むことなく生きてきました。
亡き夫は、私の笑った顔が大好きだったと思うことで、生活の一部分は楽しく明るく過ごすことができました。それでも、最初のうちはほぼ毎日、夜になるとものすごい喪失感が襲ってきます。
そんな時は、我慢せずに彼の写真や服を取り出しては、思い切り泣きました。涙が涸れても、まだ泣きました。
しかし、その間隔が、数週間に一度、3ヶ月に一度、半年に一度と、段々と空くようになった頃に、新しい恋愛が待っていたのです。
亡き夫との間に子どもがいて、生きていくのに必死で恋愛どころではない方もいるでしょう。
事故死で突然夫を亡くし、現実を受け入れられない方もいるでしょう。
夫がすべてだったはずなのに、生きている自分が許せないという気持ちもわかります。
けれども、愛する人を残して旅立つ人も悲しかったはずです。人は亡くなる時、何を思うでしょうか?それは、愛する人の幸せではないでしょうか。
「死んでも自分のことを忘れないで欲しい」ということは、他の人と一緒になるな、幸せになるな、ということではありません。
彼にとっての人生は、あなたと全うしたのです。彼とあなたは添い遂げたのです。
ただ、あなたの人生が、まだ残っているというだけ。
だから、亡くなった夫のためにも幸せに生きていくことは、誇りに思っていいことだと思います。そう思えるまで、時間はかかりますが、顔を上げて前を向いて進んでくださることを、心から願います。
当たり前が「幸せ」だと知るあなただからこそ
身体の半分をもぎ取られるほうな悲しみ。それが愛する人との別れです。
それを乗り越えて再婚するということは、前を向いて生きているということではないでしょうか。
悪いことをしている訳でも、亡くなった方への裏切り行為でもありません。亡くなった方との思い出を捨てる必要もありません。
すべての経験が、今のあなたを作っているのです。
夫を亡くした経験があるからこそ、幸せに生きる意味を知っているはずです。
毎日の当たり前のことが、どんなに幸せなことか、誰よりも知っているはずです。
それを、次の結婚に活かすこともできます。
きっと、亡くなった方は、あなたの幸せを望んでいると思います。誰に遠慮することなく、幸せになってくださいね!