歯ブラシの1.5倍の歯垢除去効果!歯科医が教える歯間ブラシの正しい使い方
[公開日]2017/08/18[更新日]2017/08/29
歯間ブラシは歯と歯の隙間に入り込んだ歯垢(プラーク)をかき出し歯の根元をキレイにすることができる清掃器具です。
実は、歯科医である筆者も歯ブラシだけでは十分に歯垢(プラーク)を落とすことができません。そのため、歯間ブラシも使いながら歯磨きをしています。
歯ブラシでは歯垢(プラーク)を落としきれない場所こそが、虫歯や歯周病になりやすいため、この記事では正しい歯間ブラシの使い方・選び方を解説します。
目次
この記事は、歯科医師の方に執筆していただき、アンチエイジングの神様チームで編集しております。
歯間ブラシは歯ブラシの1.5倍も汚れを落とす効果がある
歯間ブラシの併用で汚れの90%は落とせる
歯磨きと言えばまず歯ブラシを用いたブラッシングが主体となります。しかし歯ブラシのみでは全体の汚れの6割程度しか落とすことができません。歯ブラシは歯の表面と裏面、そして咬む面と比較的広い範囲を磨くのには適していますが、小さな隙間に毛先を当てるのはなかなか至難の業です。
そして虫歯や歯周病菌を引き起こす細菌は非常に小さく、細かい隙間でも簡単に入り込むことができます。
そのため歯ブラシでどんなに丁寧に、どんなに時間をかけて磨いたとしても、必ず磨き残しが生じてしまうわけです。
そこで歯間ブラシなどの清掃補助器具が重要になります。歯ブラシのみでは6割程度にとどまったプラーク除去率も、歯間ブラシを用いれば9割近くまで除去が可能です。
歯間ブラシは口臭予防にも役立つ
歯間ブラシは虫歯や歯周病の予防のみならず、口臭の予防にも非常に効果的です。歯についた食べかすは時間の経過とともに腐敗臭を発します。細かい隙間の汚れほど停滞しやすく口臭の原因になるのです。
強い腐敗臭を発生させる歯周病菌は、酸素の少ない場所を好んで生息しています。つまり、歯周病菌は歯の表面など酸素にさらされる部位よりも、酸素の少ない細かい隙間に多く潜んでいるわけです。
歯磨きをしているのに口臭が気になると言う人には、歯間ブラシで歯と歯の細かい隙間をきれいにすることをおすすめします。
歯間ブラシは子どもや若い人には不向き
歯間ブラシは非常に優れた歯の清掃補助器具ですが、すべての人が歯間ブラシを使えるわけではありません。たとえば、子供や若い人の歯ぐきは歯と歯の間を埋めるようにきれいな三角形をしているため、歯と歯ぐきの間に歯間ブラシを入れるスペースはありません。
しかし、歯ぐきが衰えたり、歯周病になったりすると次第に歯ぐきが下がっていきます。歯ぐきが下がると、これまで覆われていた部分が露出し、隙間となって現れます。
歯間ブラシはそのほかにブリッジという被せ物の周囲を清掃する際にも有効です。
歯間ブラシを使ったほうがいい人とは?
・歯と歯ぐきの間に隙間がある人
・ブリッジを入れている人
・矯正装置を装着している人
・ブリッジを入れている人
・矯正装置を装着している人
歯間ブラシが入らない時はデンタルフロス
歯と歯ぐきの間に隙間がなくても、歯と歯の間に汚れは付着します。そしてその汚れは歯ブラシだけでは十分に落とすことができません。そのため歯間ブラシが入らない人は、デンタルフロスを使用します。デンタルフロスは小さな子供の歯間清掃にも有効です。
はじめての歯間ブラシ選びで注目すべき2つのポイント
いざ歯間ブラシを使おうと思っても、歯間ブラシには形やサイズが様々あり、自分にはどれが良いのか迷う人も多いことでしょう。
ここでは歯間ブラシの形状やサイズについて解説し、歯間ブラシを選ぶ際のポイントを解説します。
歯間ブラシのサイズは「少しゆるめ」のものを選ぶ
歯間ブラシにはSSS/SS/S/M/Lの5種類のサイズがあり、歯の隙間の広さによってサイズを選びましょう。
部位によって歯の隙間の広さが異なる場合は、複数のサイズを使い分けることが必要です。
歯間ブラシはサイズが細すぎると磨き残しが出やすく、反対に太すぎると歯や歯ぐきを傷めたり、歯の隙間が広がってしまいます。
歯間ブラシを安全かつ効率よく使用するためには、サイズ選びが非常に重要ですが自分でぴったりサイズの歯間ブラシを見つけるのは難しいため、最初はぴったりよりも少しゆるめのサイズを選んでみてください。
こんな場合は歯間ブラシのサイズが合っていない
毛先が歯面に当たらない・出し入れする際に全く抵抗感がない
⇒歯間ブラシが細い
強い力を加えないと入らない・歯ぐきに痛みや出血を生じる
⇒歯間ブラシが太い
⇒歯間ブラシが細い
強い力を加えないと入らない・歯ぐきに痛みや出血を生じる
⇒歯間ブラシが太い
歯間ブラシに慣れていない人はアングルタイプ(L字型)がおススメ
次に歯間ブラシの形ですが、歯間ブラシには柄が真っ直ぐなストレートタイプと、柄が曲がっているアングルタイプの2種類あります。アングルタイプ(L字型)
歯間ブラシを初めて使う人や使い慣れていない人には、アングルタイプの歯間ブラシがおすすめです。アングルタイプの歯間ブラシは柄自体がカーブしているため、ストレートタイプのようにワイヤーを曲げなくても奥歯へ挿入しやすくなっています。
また、頬に厚みのある人や口が開けづらい人もアングルタイプの方が奥歯の隙間に挿入しやすくなるでしょう。
ただストレートタイプよりも価格がすこし高めになります。
ストレートタイプ(I字型)
ストレートタイプの歯間ブラシは安くて、柄が短いため力のコントロールがしやすくなっています。しかし、前歯の隙間を磨く時には操作がしやすい反面、使い慣れていないと奥歯の隙間には挿入しづらいことがあります。
その場合はワイヤーを曲げて使用すると挿入しやすくなります。ただ曲げ伸ばしを繰り返すことでワイヤーが折れやすくなるので注意してください。
上手に選ぶ自信のない人はプロに教えてもらう方が安全
歯間ブラシを初めて使う人は歯科医院で歯間ブラシのサイズを測定してもらい、挿入方法などを教えてもらうことをおすすめします。
歯間ブラシはサイズを誤ると歯磨きの効率が悪くなったり、歯や歯ぐきを痛めてしまう危険があるからです。
歯科医院には様々なサイズや種類の歯間ブラシが取り揃えてあるので、自分に1番あった歯間ブラシを探してもらうことができます。
歯間ブラシはサイズを誤ると歯磨きの効率が悪くなったり、歯や歯ぐきを痛めてしまう危険があるからです。
歯科医院には様々なサイズや種類の歯間ブラシが取り揃えてあるので、自分に1番あった歯間ブラシを探してもらうことができます。
歯科医も実践する歯間ブラシの効果的な使い方
歯間ブラシは歯の隙間に対して垂直に挿入する
歯間ブラシは歯ブラシ同様、鉛筆持ち(ペングリップ)で持ちます。鉛筆持ちは力のコントロールがしやすく、また細かい動きをするのにも適しているからです。
歯間ブラシは歯の隙間に対して垂直にゆっくり挿入するのが基本です。もし垂直で上手く入らない場合は、ブラシを少し歯の方に傾けると入りやすくなります。
この時、歯間ブラシを歯ぐきの方に傾けると、歯ぐきを傷つけてしまいます。歯間ブラシを挿入する際は必ず鏡をみて、挿入する方向を確認するように心がけましょう。
歯間ブラシは二方向から挿入すると汚れがきれいに落ちる
歯間ブラシを一方向からのみ挿入しても、歯と歯の間の汚れしか落とすことはできません。
しかし、図のように二方向から挿入すると、隙間に面するすべての部位の汚れを効率よく落とすことができます。
歯間ブラシは軽く口を閉じると入れやすい
そのため歯間ブラシを挿入する時は口を閉じぎみにし、唇や頬を伸びやすくするのが上手に使用するポイントです。特に奥歯の隙間に挿入する際は、口を軽く閉じて反対の手の指で頬を内側から横に引っ張ると、歯間ブラシが入れやすくなります。
歯間ブラシを挿入したら4~5回往復する
歯間ブラシが上手く挿入できたら、一方向に対して4~5回往復させて汚れを取り除いていきます。この時、力はあまり入れないように注意しましょう。歯ブラシ同様に力を入れすぎると歯や歯ぐきを傷めてしまう原因になります。
はじめは歯ぐきに沿ってゆっくり動かし、その後汚れを落とす歯面を意識しながら動かすようにしましょう。
やってはいけない歯間ブラシの間違った使い方
歯間ブラシは隙間に溜まった汚れを落とすのに効果的ですが、使い方を誤ると歯や歯ぐきを傷つけてしまう恐れがあるので注意が必要です。
サイズが大きすぎる歯間ブラシを使用する
鏡を見ずに歯間ブラシを使用する
強い力で無理矢理挿入する
サイズが大きすぎる歯間ブラシを使用する
鏡を見ずに歯間ブラシを使用する
強い力で無理矢理挿入する
歯間ブラシを使うと歯と歯のすきまが広がるのは本当か
歯間ブラシは使ってみると、「歯と歯のすきまが広がった」「血が出た」という方もいます。歯間ブラシを使う前に気になる疑問についてお答えします。
- 歯間ブラシを使ったら、歯と歯の隙間が大きくなった気がするのはなぜ?
- 歯間ブラシを使いはじめの頃は、歯と歯ぐきの隙間が前より大きくなったと感じやすくなります。「歯間ブラシの使用はよくないのでは?」と不安に思う人も多いようです。
歯間ブラシを使った後に、歯と歯の隙間が大きくなるのは歯ぐきがそれだけ引き締まった証拠です。
使用前には歯ぐきに何らかの炎症があり、歯間ブラシを使用することでその炎症が治まったという証拠になります。
しかし、サイズの大きい歯間ブラシを使用している場合は、歯ぐきの炎症に関わらず、歯ぐきを退縮させたり歯を削っている可能性があります。
もし隙間の大きさが気になるようであれば、1度歯科医院で相談してみましょう。
- 歯間ブラシの使用は歯ブラシの前と後、いつ使うか?
- 歯間ブラシは歯ブラシの前でも後でもどちらでも構いません。歯間ブラシの習慣が身についていない人は、歯ブラシの前に行うと習慣づけが行いやすいというメリットがあります。
ただ歯間ブラシはそれほど耐久性に優れていないため、あまりに多くの汚れや食べかすがついている状態で歯間ブラシを使用すると、歯間ブラシの傷みが早くなるので、歯ブラシの後に使用するのがおすすめです。
- 歯間ブラシを使うと歯ぐきから出血があるのは問題ない?
- 歯間ブラシを使用の際の出血は、その原因によって可否は分かれます。
歯ぐきに軽い炎症がある場合、歯間ブラシを使用すると出血します。痛みを伴わなければそのまま使用しても問題はありませんが、歯茎に腫れや痛みなど強い炎症がある場合は一旦使用を中止し、歯ブラシによるブラッシングで炎症をある程度抑えてから歯間ブラシを使用しましょう。
特に歯ぐきに炎症はないのに出血があり、なおかつ痛みを伴う場合は、歯間ブラシのサイズや挿入方法に問題がある可能性があります。
その場合、大きなサイズの歯間ブラシを使用していないか、挿入方向が正しいかをよく確認してみましょう。
- 歯間ブラシは毎日するべき?回数は?
- 歯間ブラシは歯磨きの一環ですので、1日3回毎食後に使用するのがベストです。
しかし、毎回の歯磨きにそこまで時間をかけられないという方は、歯間ブラシは1日1回、就寝前の使用をおすすめします。
- 歯間ブラシにも歯磨き粉はつける?
- 歯間ブラシは基本的に何もつけずに使用します。
特に発泡剤や研磨剤の配合された歯磨き粉は、泡立ちによって挿入方向を誤ったり、歯を削ってしまう恐れがあるため使用は控えましょう。
もし何かつけるのであれば、発泡剤や研磨剤が配合されていないジェル状か液体の歯磨き粉を使用してください。
- 歯間ブラシの保管方法、交換時期は?
- 歯間ブラシは使用後に水洗いし、風通しの良いところで乾燥させてください。
現在販売されている歯間ブラシの多くにキャップがついていますが、乾燥させないままキャップをしてしまうと雑菌が繁殖しやすいので注意しましょう。
歯間ブラシの交換時期は、購入する歯間ブラシの耐久性や使用頻度よって異なります。ひとまず、1日1回の使用で2週間程度での交換を目安にしてみてください。
この期間に関わらず、歯間ブラシが以下のようになってきたらすぐに新しいものに交換しましょう。
歯間ブラシを交換する目安・歯間ブラシのワイヤーが曲がっている、弾力がない
・ブラシの毛が少なくなった、毛が乱れている
まとめ 歯間ブラシは使い方よりもサイズ選びが重要!
歯間ブラシは、正しく使うことで歯ブラシでは落としきれない歯垢(プラーク)を落とすことができます。そのためには、大きすぎず小さすぎないサイズ選びが重要です。
間違ったサイズ選びは歯茎を傷つける原因にもなるため、安い歯間ブラシをいくつか買ってサイズを確認しても良いでしょう。
使いはじめは少し難しく感じるかもしれませんが、適切なサイズと挿入方向を間違わなければ、慣れてくると使用時間は2~3分程度まで短縮できるようになります。
歯の健康で後悔しないためにも、今から歯間ブラシを習慣づけることをおすすめします。
《編集:安藤美和子》
サプリメントアドバイザー、化粧品検定一級、薬事法管理者の有資格者チームの管理人。化粧品開発・プロモーションの実務経験を活かし、雑誌・WEBメディアの執筆/ディレクションを行う。
サプリメントアドバイザー、化粧品検定一級、薬事法管理者の有資格者チームの管理人。化粧品開発・プロモーションの実務経験を活かし、雑誌・WEBメディアの執筆/ディレクションを行う。
◆参考文献
プラークコントロールのためのホームケア指導 荒川浩久監修 クインテッセンス出版株式会社