口が渇いてない?放置すると怖いドライマウスの症状と対処法4選
[公開日]2017/07/01
ドライマウスとは唾液の分泌量が減り、口の中が乾いている状態のことです。
ドライマウスを放置しておくと、かぜをひいたり便秘になることもあるので、ご飯を食べる時はよく噛むようにしたり、しっかり睡眠をとることが重要になります。
今回は歯科医である筆者の経験を元に、ドライマウスの意外な症状や原因、さらにドライマウスを予防するためのポイントなどをご紹介していきたいと思います。
目次
この記事は、歯科医師の方に執筆していただき、アンチエイジングの神様チームで編集しております。
いつも口が乾いてませんか?ドライマウスのセルフチェック
あなたは大丈夫?ドライマウスのチェック法
健康な人でも1日の中で唾液の分泌量にはリズムがあり、例えば起床時や空腹時、緊張している時などに口の中が乾きやすくなります。そのため自分がドライマウスだと気づかない事も珍しくありません。しかし普段あまり気にしていない動作などにも実はドライマウスの影が潜んでいる可能性があります。
例えば、「食事の時にお茶がないと食事がしづらい」「長くしゃべっていると舌が動きづらくなる」などは、ドライマウスの初期には良くみられる症状です。
その他にも、もし以下のような症状が複数あり、それが3か月以上続く方はドライマウスの可能性があるので注意しましょう。
「口の乾き」以外に「目の乾き」もある場合は要注意
ドライマウスは単独でも生じますが、中には他の病気によってドライマウスが引き起こされることがあります。ドライマウスの原因は以下に詳しく解説しますが、口の乾き以外にも目の乾きや皮膚の乾きなども感じる場合は「シェーグレン症候群」と呼ばれる疾患の可能性があります。
シェーグレン症候群とは
シェーグレン症候群は国によって難病指定をうけた自己免疫疾患です。中高年以降の女性に発症しやすく、口や目の乾き以外にも皮膚や鼻の中の乾燥、関節痛などを伴う場合もあります。
シェーグレン症候群は内科やリウマチ科、膠原病内科などの受診が必要です。
シェーグレン症候群は内科やリウマチ科、膠原病内科などの受診が必要です。
加齢やストレスで起きる!ドライマウス5つの原因
ドライマウスには2つのタイプがあります。ここではそれぞれのタイプ別による、ドライマウスの原因について詳しく解説していきます。
加齢や食生活による筋力の低下
噛むことで唾液の分泌が促されることは、よく知られています。これは噛むことによる筋肉の動きが、唾液の分泌をつかさどる唾液腺という器官を刺激するからです。しかし加齢とともに筋力が低下すると噛む力も弱くなります。そのため唾液腺に加わる刺激も弱まり、唾液腺の機能も次第に衰えてしまうのです。
さらに近年は柔らかい食べ物を好む傾向が強く、噛み応えのあるものをしっかり噛むという習慣が少なくなっています。そのため若い人でも唾液腺の機能が低下し、ドライマウスになる人が増えています。
小さな子供もドライマウスになる?
子供の頃から歯ごたえのあるものをしっかりと噛むことは、顔面周囲の機能の発育には非常に重要です。幼いころから柔らかい物ばかり食べさせていれば、顎の成長の他にも周囲の筋肉や唾液腺の発達にも影響し、歯並びが悪くなったりドライマウスになることがあります。
また食事中に水分を多く摂らせてしまうことも、噛まないで飲み込んだり、唾液の分泌を減らす原因となるので注意しましょう。
ストレスによる自律神経の乱れ
唾液の分泌をつかさどる唾液腺は自律神経によって支配されており、リラックス状態の時に分泌が多くなり、緊張状態の時には分泌が減る仕組みになっています。人前で話さなけらばならない時や初めてのデートなどで口が乾きやすいのも、緊張によって唾液が量が減ることが原因ですが、これは一時的なものです。
しかしストレスは長く続くと身体を常に緊張した状態にし、唾液の分泌も減少し続きます。つまり強いストレスや慢性的なストレスもドライマウスの原因になるのです。
アレルギーの薬や鎮痛剤など薬による副作用
ドライマウスは薬の副作用によっても起こります。以下に示す薬剤は唾液の分泌を減らすことで知られており、薬剤を中止、または減量しないとドライマウスは改善しません。ドライマウスの原因となる薬剤
・抗うつ剤や抗不安剤
・高血圧の薬
・鎮痛剤
・アレルギーの薬 など
・高血圧の薬
・鎮痛剤
・アレルギーの薬 など
糖尿病などの全身疾患
先にのべたシェーグレン症候群や糖尿病などは唾液腺の働きを弱め、ドライマウスを引き起こす原因となります。全身の疾患が原因で起こるドライマウスは専門科による治療が必要です。ドライマウスを引き起こす可能性がある疾患
・シェーグレン症候群
・糖尿病
・脳血管障害(脳出血・脳梗塞など)
・更年期障害
・外傷
など
・糖尿病
・脳血管障害(脳出血・脳梗塞など)
・更年期障害
・外傷
など
また、放射線治療や手術などによって唾液腺に障害が生じることで起こるドライマウスもあります。
口呼吸による唾液の蒸発
唾液は正常に分泌されていても、唾液の蒸発量が多くなればドライマウスになります。もっとも多いのは「口呼吸」によるものです。口呼吸は単なるクセの場合もありますが、アレルギー鼻炎や花粉症などによる鼻づまりで口呼吸になることもあります。
また夜中にイビキをよくかく人は、寝ている間に口を開けている時間が長くなり口が乾きやすくなります。その他に歯ぎしりなども口が乾く原因です。
漢方による治療法も!ドライマウス4つの改善方法
全身疾患や飲んでいる薬剤などドライマウスの原因が明らかな場合は、その疾患を治療したり、薬の減量や服用の中止を行わないと症状を改善することができません。
しかし加齢などによるドライマウスは、症状を改善もしくは軽減するための方法がいくつかありますので、以下にご紹介していきましょう。
唾液腺をマッサージする
唾液の分泌を行う唾液腺は、耳下腺(じかせん)、顎下腺(がっかせん)、舌下腺(ぜっかせん)の3つがあります。
その唾液腺に適度な刺激を与えると唾液の分泌が促され、ドライマウスの症状を軽減することができます。
唾液腺マッサージのポイント
耳下腺・・・耳たぶの前方あたりに人差し指を置き、指先で優しく押す
顎下腺・・・顎の骨の内側の柔らかい部分を指先で優しく押す
舌下腺・・・顎の先の内側、舌の付け根あたりを親指で優しく押す
どの部位も痛くない程度に5~10回程度押し、唾液がじわっとにじみ出る感じがしたらOKです。
顎下腺・・・顎の骨の内側の柔らかい部分を指先で優しく押す
舌下腺・・・顎の先の内側、舌の付け根あたりを親指で優しく押す
どの部位も痛くない程度に5~10回程度押し、唾液がじわっとにじみ出る感じがしたらOKです。
口の周りの筋肉を鍛える
唾液腺のマッサージと同時に取り入れたいのが、口周りの筋肉トレーニングです。
舌を前に突き出して左右に動かしたり、唇をぐるっと舐めまわす運動は口周りの筋肉が鍛えられ、唾液の分泌を促す他に小顔効果が期待できます。
ガムを噛んだり酸味のあるキャンディーを舐める
ガムを噛むことは唾液の分泌を促す効果があります。また酸っぱいものを想像すると唾液がじわっと出てくるように、レモン味など酸味のあるキャンディーを舐めると唾液の量が増えます。
ただし、糖分を含むものは口の乾燥の原因になります。
ガムやキャンディーを選ぶ際は、ノンシュガーのものにしましょう。
部屋の中を十分に加湿する
エアコンなどによって部屋の中が乾燥すると、鼻の中が乾いて詰まりやすくなります。そのため口で呼吸する回数が増え、口の中が乾く原因になります。
ドライマウスの症状を軽減するには、部屋の湿度も重要です。
加湿器などでうまく調整するか、もしくは口の中が乾いたらすぐに水分を補給するなどして工夫しましょう。
人工唾液や保湿剤、漢方による治療法もある
歯科におけるドライマウスの対処法では、人工唾液や保湿剤を用いた治療法があります。人工唾液
人工唾液はその名の通り人工的に作られた唾液です。スプレー状になったものが多く、1日4~5回ほど噴霧します。ただし人工唾液はシェーグレン症候群や放射線障害などでしか処方されません。
保湿剤・湿潤剤
保湿剤や湿潤剤は、ヒアルロン酸などの保湿成分やリゾチームなどの抗菌成分が配合されています。マウスウォッシュのような洗口液タイプと口の中に塗るジェルタイプなどがあります。
人工唾液はその名の通り人工的に作られた唾液です。スプレー状になったものが多く、1日4~5回ほど噴霧します。ただし人工唾液はシェーグレン症候群や放射線障害などでしか処方されません。
保湿剤・湿潤剤
保湿剤や湿潤剤は、ヒアルロン酸などの保湿成分やリゾチームなどの抗菌成分が配合されています。マウスウォッシュのような洗口液タイプと口の中に塗るジェルタイプなどがあります。
また漢方の中にもドライマウスの症状改善に良いものがあります。ただ症状の程度によって処方も変わるため、専門科での相談の上で服用します。
ドライマウスに良い漢方
・麦門冬湯(ばくもんとうとう)
・白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)
・柴苓湯(さいれいとう)
など
・麦門冬湯(ばくもんとうとう)
・白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)
・柴苓湯(さいれいとう)
など
ドライマウスを放置すると口臭や風邪を引き起こす
ドライマウスは単なる「口の乾き」だけですむ疾患ではありません。
ドライマウスをそのままにしておくと、口のトラブルのみならず、やがて全身にも何らかの影響を及ぼします。
虫歯や歯周病になりやすい
唾液はただ口の中を潤すだけでなく、汚れを洗い流して口の中を清潔に保つ役割があります。そのためドライマウスによって口の乾燥が長引くと、当然ながら虫歯や歯周病になるリスクが高くなります。
また唾液にはカルシウムやリン酸、フッ素など歯を丈夫にする成分も多く含まれます。
唾液の分泌が少なくなると、虫歯菌の酸から歯を守る作用も弱まり、さらに虫歯を悪化させてしまうのです。
口臭が強くなる
唾液の分泌が少なくなると、口の中に汚れが溜まりやすくなり口臭の原因になります。また、唾液には口の中の温度を下げる働きもあります。唾液が少なくなることで口の中の温度が上がってしまうと、ニオイの成分が蒸発しやすくなり、口臭を強くなります。
味の感じ方が変わる味覚障害を引き起こす
私たちが味を感じるのは、舌の上に「味蕾(みらい)」という感覚器官があるからです。ドライマウスによって口の中が乾くと舌がこすれて味蕾がなくなってしまい、味を感じにくくなります。
また唾液の減少によって口の中に細菌が増殖すると、舌にも炎症を起こします。舌の炎症によって味蕾が破壊されることも、味覚障害の原因です。
風邪をひきやすくなる
口は外界から様々なものを体内へ取り込む入口です。その中には風邪やインフルエンザの原因となるウィルスなども含まれます。唾液の中には細菌やウィルスを殺菌する成分が含まれており、ウィルスなどから体を守る役割も果たしています。
そのためドライマウスになると唾液による防御機能が働きにくくなり、風邪をひきやすい体質になってしまうのです。
胃腸障害・便秘などを引き起こす
唾液の成分には消化酵素も含まれています。そのため唾液の分泌が減ることは食べ物の消化にも影響し、胃や腸の負担を大きくする原因になります。またドライマウスによって食事がしづらくなったり、食べ物を飲み込みにくくなることも胃腸障害や便秘になりやすい原因です。
ドライマウスの予防対策は「よく噛むこと」が大切
ドライマウスを予防するには、唾液腺の機能が衰えないようにすることがまず第一です。
そのために日常生活でどのようなことに心がけたほうが良いのか、具体的にご紹介しましょう。
歯ごたえのあるものを良く噛み、バランスの良い食事を摂る
ドライマウスを予防するために肝心なことは、唾液の分泌を促すことです。もっとも効果的なのは歯ごたえのある食べ物をと良く噛んで食べることでしょう。また唾液腺の機能や、唾液腺をつかさどる自律神経を正常に保つためには、栄養のバランスも非常に重要です。
ドライマウス予防に良い食べ物
・スルメ
・メザシやイリコ
・ゴボウ、レンコン、人参などの根菜類
など
・メザシやイリコ
・ゴボウ、レンコン、人参などの根菜類
など
正しい姿勢を心がける
意外だと思うでしょうが、ドライマウスを予防するたには姿勢を正しくすることも大切です。例えば、スマートフォンやパソコンなどの長時間使用によって姿勢が悪くなると、首や肩の凝りを引き起こします。首や肩の凝りは唾液腺周囲の血流を悪くし、唾液の分泌を低下させてしまうのです。
同様に猫背の人や、頬杖をつく癖のある人も唾液腺の働きを弱める可能性があるので注意しましょう。
適度な運動を心がけ、ストレスを溜めないようにする
ストレスはドライマウスを引き起こす大きな原因の1つです。そのため普段の生活からストレスをできるだけ少なくするように心がけることも、ドライマウスの予防には必要です。また適度な運動は自律神経のバランスを整るのには有効で、ストレスの解消にもなります。
ストレス以外にも不規則な生活は自律神経を乱す原因となるので、生活習慣を改善することもドライマウスの予防には効果的です。
タバコや飲酒は控える
お酒を沢山飲むと口の中が乾く経験をしたことのある人は多いでしょう。アルコールは体内で分解される過程で水分を必要とするため、口の中も乾きやすくなります。適度な飲酒によってストレスを解消する程度であれば問題ありませんが、毎日大量に飲酒することはドライマウスを引き起こす要因になるので注意が必要です。
またタバコは口の中の機能を低下させる原因の1つです。タバコによって唾液の分泌が低下し、その状態が長く続けばドライマウスになる要因となるので、早めに禁煙することをお勧めします。
ドライマウスは放置せずに早めに対処することが大切
ドライマウスの多くは、唾液の分泌量が減少することで生じるます。
古くから知られている疾患でしたが、「唾液が少なくなるだけ」と安易に考えられてしまい、これまでなかなか大きな話題にはなりませんでした。
しかし「たかが口の乾燥」と侮っていると、風邪などのウィルスに感染しやすくなったり、胃腸障害など体に様々な悪影響を及ぼしてしまいます。
ドライマウスの認知度はまだ低く自身は気づかない場合も多いですが、日常の些細なことがひょっとするとドライマウスの初期症状であるかもしれません。
《参考文献》
「ドライアイ&ドライマウス」 斎藤一郎・坪田一男 監修 永末書店
「ドライマウス」 斎藤一郎 著 日本評論社
《編集:安藤美和子》
サプリメントアドバイザー、化粧品検定一級、薬事法管理者の有資格者チームの管理人。化粧品開発・プロモーションの実務経験を活かし、雑誌・WEBメディアの執筆/ディレクションを行う。
サプリメントアドバイザー、化粧品検定一級、薬事法管理者の有資格者チームの管理人。化粧品開発・プロモーションの実務経験を活かし、雑誌・WEBメディアの執筆/ディレクションを行う。