歯科医解説!正しい歯磨きとやりがちなNG歯磨き
[公開日]2017/07/27[更新日]2018/05/23
「毎日歯磨きしているのに、虫歯や口臭がキツくなる。」
それは歯を磨いた「つもり」になっているからです。
歯磨き粉をつけるまえに歯ブラシを濡らしていませんか?歯ブラシを水で濡らすと、歯磨き粉の泡立ちが良くなり磨いた「つもり」で汚れは残ったままになっています。
そこで、赤ちゃんから年配の方まで何百人もの患者さんを診てきた歯科医が正しい歯磨き方法を解説していきます。
目次
この記事は、歯科医師の方に執筆していただき、アンチエイジングの神様チームで編集しております。
歯磨き粉のつけすぎ、口のゆすぎすぎはNG
歯磨きは口内の健康だけでなく、身体の健康を維持するうえでも欠かせません。しかし、歯磨きの仕方が間違ったままだと、かえって歯や歯ぐきを傷つけてしまいます。
また普段何気なく行っていた行為が、実は歯磨きの効果を半減させている可能性もあるのです。
ここでは、歯磨きを行う際に気を付けてほしいNGポイントについてご紹介していきます。
NGポイントその1:
歯磨き粉をつける前に歯ブラシを濡らす
数ある歯磨きのNG行為のなかでも、多くの人がやってしまいがちなのが歯磨きをする前に歯ブラシを濡らしてしまうことです。歯磨き粉を使用していない方であれば特に問題はありません。しかし、歯ブラシを濡らしてから歯磨き粉をつけると泡立ちが強くなり、磨けてないのに磨いたつもりなってしまいます。
また液状歯磨き粉の場合は濃度が薄まるため、せっかくの薬効成分の効果が弱くなることもあるのです。
歯磨き粉を使う際は、歯ブラシが乾いた状態で歯磨き粉をつけましょう。
NGポイントその2:
歯磨き粉をたっぷりつけて磨く
チューブに入った練り歯磨きには、研磨剤(汚れを削って落とす成分)が配合されています。研磨剤配合の歯磨き粉は、歯の表面の黄ばみなどを効率よく落とす働きがある反面、使いすぎると歯の表面(エナメル質)を傷つける恐れがあります。
したがって、歯磨き粉をブラシにいっぱい付けて磨くのはやめましょう。チューブ入りの歯磨き粉はブラシの長さの1/4~1/3程度で十分です。
NGポイントその3:
歯磨き後、何回も口をゆすぐ
これも多くの方がやりがちですが、実はフッ素入りの歯磨き粉を使っている場合は口をあまりゆすいではいけません。なぜなら口をゆすぎすぎると、せっかくのフッ素の効果が無意味になってしまうからです。
フッ素配合の歯磨き粉を使用の際は、少量の歯磨き粉で磨いた後、小さじ2杯程度の水で1回だけゆすぐだけにしましょう。この方法であればフッ素の効果が十分に歯に行き渡ります。
NGポイントその4:歯を磨きすぎる
口臭や歯の黄ばみを気にする方や、少し神経質な方が行いやすいNG行為の中に「磨きすぎ」があります。歯磨きの基本は1日3回毎食後、時間は1回につき10分程度です。
歯磨きを1日に何度も行ってはいけない理由は大きく2つあります。
・磨きすぎによって、歯や歯ぐきに余計なダメージをあたえてしまう
・磨きすぎると唾液による自浄作用が働きにくくなり、口が乾燥する原因になる
・磨きすぎると唾液による自浄作用が働きにくくなり、口が乾燥する原因になる
こんにちは!「アンチエイジングの神様」管理人の安藤美和子です。歯を綺麗にしたい!と思って歯磨きを頑張りすぎると、かえって歯にとってはマイナスなのね・・・
歯ブラシはシンプルでコンパクトなものを選ぶ
ヘッドが小さく、ネックや柄が真っ直ぐなものを
歯ブラシはヘッド(ブラシ部分)が小さいほど小回りが利き、細かいところも磨きやすくなります。目安は幅が1㎝以内、長さは2㎝以内のものが理想的です。またネックがカーブしているものより、真っ直ぐな歯ブラシの方がブラシを直角にあてやすいでしょう。
ブラシの硬さは「ふつう」がベスト
歯ブラシの硬さには「やわらかめ」「ふつう」「かため」の3種類ありますが、通常は「ふつう」を選んでください。「やわらかめ」は歯ぐきに炎症があり、出血などがある場合に使いましょう。
またスッキリ磨けるという理由で「かため」を好む方もいますが、「かため」は歯や歯ぐきを傷つける原因になります。
「かため」は力の弱い高齢者やハンディキャップのある方が使用する歯ブラシと考えましょう。
極細毛歯ブラシは歯ぐきを傷めやすい
歯ブラシの中には毛先が細く加工しているものがあります。毛先が細いと歯周ポケット(歯と歯ぐきの溝)や歯と歯の間など、小さな隙間に溜まった汚れも落とすことができるのです。
しかし毛先が細いタイプの歯ブラシはプロ仕様のものが多く、歯磨きのテクニックに自信のある方にはおすすめできますですが、そうでない方が使用すると歯ぐきを痛めてしまう恐れがあります。
したがって通常は毛先の太さもふつうのもの(ラウンドカット)を選びましょう。
正しい歯磨き基本編:歯ブラシの当て方や動かし方に注意する
それではまず、歯磨きの基本からおさらいしていきましょう。
歯ブラシの持ち方は「ペングリップ」
歯ブラシの持ち方には、柄の部分を手のひらで覆うような握り方(パームグリップ)と、柄を鉛筆を持つように持つ握り方(ペングリップ)があります。
歯ブラシはペングリップで持つのがまず基本です。ペングリップはブラシの力加減や磨きにくい部位を磨く際に、動きを細かく調整できます。
一方、パームグリップは動きが大雑把になりやすく、また力が強く入りすぎるため、おすすめできません。
ただし力の弱い子供やお年寄りの場合はギュッと握るパームグリップの方が磨きやすいでしょう。
ブラシの先は歯面に対して直角にあてる
歯ブラシはブラシの先を歯面に対して直角に当てると、最も効率よく汚れを落とすことができます。
それ以外の角度だとブラシ面と歯面が接触する面積が狭くなるほか、ブラシの力も均等に加わらないため、汚れを落とすのに時間がかかってしまいます。
ブラシ先が曲がらない程度の力加減で磨く
歯磨きの方法で最も難しいのは力加減です。
歯にブラシを当ててぐっと押した時に、ブラシの先が曲がらない程度の力で十分です。
指にブラシを押してみて、少し皮膚は凹むけど、ブラシは曲がっていないぐらいがちょうど良い圧力でしょう。
しかしこれは新品で硬さが「ふつう」の歯ブラシの場合です。歯ブラシは使っていくうちにブラシが柔らかくなっていくため、必ず新品の歯ブラシで確認してくださいね。
少しの力しか入れていないのに、かんたんに歯ブラシの先が曲がってしまう場合は歯ブラシ交換の時期でしょう。
歯ブラシを細かく振動させて磨く
よくやりがちですが、歯ブラシをノコギリの歯を引くように大きくスライドさせる磨き方では、歯をきれいに磨くことはできません。なぜなら、歯の表面はカーブを描き、また全体の並びには凹凸があるからです。
歯ブラシを大きくスライドすれば凸部分ばかりが磨かれ、凹んだ部分には歯ブラシが当たらず、磨き残しの原因になります。
歯ブラシはブラシを歯面に当て適度な圧を加えたら、そのあとは横に小刻みに振動させながら1本分ずつ歯ブラシを移動させて磨いていきましょう。
正しい歯磨き応用編:歯の間や境目の汚れを見落とさない!
歯ブラシの持ち方や動かし方などの基本をマスターしたところで、さらに歯磨き上手になるための秘訣を聞いてみましょう!
磨き残しが多い3つの場所を徹底的に磨く
口の中でも、特に磨き残しが多い場所は歯の溝(噛む面)
歯と歯の間
歯と歯ぐきの境目
歯と歯の間
歯と歯ぐきの境目
です。これらの部位は虫歯になりやすい場所でもあります。
つまり歯磨きの最大の目的である「虫歯予防」においては、この3か所を徹底的に意識して磨くことが重要なのです。
歯ぐきを傷めずに歯と歯ぐきの境目を磨くコツ
歯と歯ぐきの間にブラシ面を直角に当てて磨く場合、力加減を誤ると歯ぐきを痛めてしまう可能性があります。
そのため、力のコントロールに自信がない方や歯ぐきに炎症がある方などは、歯ぐきのきわを磨く時にブラシを45度に傾けて当てると磨きやすくなります。
歯ブラシのあらゆる部分を工夫して使う
歯ブラシはいつも全面を歯に押し当てるのではなく、磨く部位に応じてブラシのつま先、わき、かかとの部分を上手く使うことで、細かいところも綺麗に磨くことができます。例えば、
歯ブラシの「つま先」・・・歯と歯ぐきの境目(裏側)、一番奥の歯の周囲
歯ブラシの「わき」・・・歯と歯ぐきの境目(表側)、歯と歯の間
歯ブラシの「かかと」・・・歯と歯ぐきの境目(裏側)
歯ブラシの「わき」・・・歯と歯ぐきの境目(表側)、歯と歯の間
歯ブラシの「かかと」・・・歯と歯ぐきの境目(裏側)
などのように、磨きにくい部位は歯ブラシのあらゆる面を工夫して使ってみましょう。
歯垢染め出し液を使って歯を磨く
歯磨きをさらに上達させるには、歯垢染め出し液の使用が不可欠です。染め出し液を使うと、磨いているつもりで磨けていない部分や自分の磨きクセがわかります。
さらに染め出し液を使って歯磨きを行うと、どのように歯ブラシを当て、そしてどのくらいの力であれば汚れを落とせるのかを把握しやすくなります。
磨く順番を決める
最後に重要になってくるのが、歯を磨く順番です。歯磨きの順番をあらかじめ自分で決めておき、毎回その順番どおりに磨くクセをつけましょう。磨き忘れを防ぐことができます。
具体的にはこのような順番がおすすめです。
パターン1:1本の歯のすべての部位を磨き終えながら、全体を一周(右上⇒上前歯⇒左上⇒左下⇒下前歯⇒右下)する。
パターン2:磨く部位(表側⇒噛む面⇒裏側⇒歯と歯ぐきの境目)を意識しながら、全周を何度か往復する。
パターン2:磨く部位(表側⇒噛む面⇒裏側⇒歯と歯ぐきの境目)を意識しながら、全周を何度か往復する。
すべての歯、すべての部位に歯ブラシが当たるように、自分の磨き方を決めましょう。
歯と歯の間には歯科医も「歯間ブラシ」を使っている
歯科医である筆者でも歯と歯の間は歯ブラシだけでは十分に汚れは落とせないため、歯間ブラシを使っています。
正しく歯磨きするには、歯ブラシ以外にも歯間ブラシやデンタルフロスなどの補助器具の使用は必須です。
ここでは、ドラッグストアやスーパーでも買える歯間ブラシやマウスウォッシュの選び方について解説しますね。
歯間ブラシはサイズのあったものを使用する
歯間ブラシのサイズはsssサイズからLサイズまで、計5種類の太さがあります。歯間の大きさは人や部位によっても変わるため、歯間ブラシを使う時は自分の歯間のサイズを測ることから始まります。
一番良い方法は、歯科医院で歯間ブラシのサイズを調べてもらうことです。
特に初めて使用する人は、どのサイズが自分に1番あっているのかを判断するのはなかなか難しいでしょう。
歯科医院に行くのが面倒な場合は、以下の方法で自身のサイズを調べてみてください。
歯間ブラシのサイズを調べるポイント
1.まずはsssもしくはssサイズの歯間ブラシを順にゆっくり歯間に入れてみる。
2.挿入できたらゆっくりスライドしてみる。スカスカの場合はもうワンサイズ大きいものを入れてみる。
3.歯にブラシの当たる感触があり、しっかり磨けていればOK。痛い場合はサイズを小さくする。
2.挿入できたらゆっくりスライドしてみる。スカスカの場合はもうワンサイズ大きいものを入れてみる。
3.歯にブラシの当たる感触があり、しっかり磨けていればOK。痛い場合はサイズを小さくする。
デンタルフロスは輪にすると使いやすい
歯間ブラシのsssやssが入らない場合は、デンタルフロスを使用します。
デンタルフロスは両端を指に巻き付けて使用しますが、実際にやってみると難しいと感じる方も多いようです。
その場合、デンタルフロスの両端を結び、輪にして指をひっかけると使いやすくなります。
その他に持ち手のついたフロスもあるので、自分が使いやすいものを選びましょう。
一番奥の奥歯や歯並びの悪い部分はワンタフトブラシを使う
ワンタフトブラシは細かい部分を磨くための小さな歯ブラシです。細かい部分を磨くのには適していますが、すべての歯を磨くにはかなりの時間を要するため、補助的な歯ブラシとして用いられます。
ワンタフトブラシは、以下のような歯ブラシでなかなか届きにくい場所を磨くのに適しています。
・奥歯の奥
・生えかけの親知らず
・歯並びが悪く、通常の歯ブラシが当てにくい部位
・矯正器具の周囲
・生えかけの親知らず
・歯並びが悪く、通常の歯ブラシが当てにくい部位
・矯正器具の周囲
デンタルリンスはアルコールの入っていないものを選ぶ
抗菌作用のあるデンタルリンスは、歯磨きの仕上げとして使用するのがおすすめです。特に就寝前の歯磨きの後、仕上げにデンタルリンスを用いると、朝起きたときの口のネバツキを抑える効果があります。
しかし、アルコールが配合されたデンタルリンスは爽快感を得ることはできますが、反対に口の乾燥の原因となる場合があります。
そのためデンタルリンスを使用する場合は、アルコールの入っていないものを選ぶようにしましょう。
虫歯や歯周病の予防だけじゃない、正しく歯を磨く4つのメリット
歯磨きの1番の目的は虫歯や歯周病などを予防することです。
歯磨きと虫歯の関連性は古くから周知されており、日本においては平安時代の医学書に「朝夕歯を磨けば虫歯にならない」と書かれています。
しかし歯磨きの目的は、なにも虫歯や歯周病の予防だけにはとどまりません。
口臭の予防
口の中に食べかすが残ったままだと、食べカスが腐敗し口臭の原因になります。しかし、自分の口臭はなかなか自分でわかりません。毎日の歯磨きは口臭を予防するためのエチケットでもあります。
歯の黄ばみを予防する
歯の黄ばみの原因となる代表的なものと言えば、コーヒーや紅茶などが挙げられます。そのほかにも醤油やケチャップ、ソースなども歯の黄ばみを強くする食品です。
これらの食品によって付着した歯の汚れはその都度歯磨きで落としていかないと、少しずつ歯が黄ばんでいきます。
すぐであれば歯磨きで落とせますが、長年放置したままだと、ホワイトニング歯磨き粉を使っても落とせないガンコな黄ばみになるのです。
全身に関わる病気の予防
間違った歯磨きで口の中に歯垢が残ったままだと、細菌やウィルスに感染しやすくなり、風邪やインフルエンザ、さらには肺炎の原因になることもあります。歯磨きは虫歯や口臭、歯周病の予防だけでなく、全身にまつわる病気の予防にも有効だと言えます。
虫歯や歯周病は全身に影響を及ぼす
近年の研究で虫歯や歯周病は口の中だけにとどまらず、全身にも影響を及ぼすことがわかりました。歯周病とは、歯垢の中の細菌によって歯肉に炎症を起こす病気のことです。口の中のネバつきや口臭、血が出るといった症状には注意しましょう。
特に歯周病は、以下のような病気を引き起こす可能性もあります。
歯周病が引き起こす可能性がある病気
・糖尿病
・心臓疾患
・脳血管障害
・アルツハイマー病
・妊婦の低体重児出産や早産
・心臓疾患
・脳血管障害
・アルツハイマー病
・妊婦の低体重児出産や早産
正しい歯磨きは虫歯だけでなく健康維持にも役立つ
歯は、食べ物をかみ砕いて消化しやすくしたり、正しい発音で会話をするために欠かせません。虫歯や歯周病にならないよう1本ずつ丁寧に磨くようにしましょう。
正しい歯磨きの方法をマスターして大切な歯を守ることは、将来にわたって心身の健康維持に役立ちます。
歯科で定期的に自身のブラッシングチェックを行ってみるのもおすすめですよ。
《編集:安藤美和子》
サプリメントアドバイザー、化粧品検定一級、薬事法管理者の有資格者チームの管理人。化粧品開発・プロモーションの実務経験を活かし、雑誌・WEBメディアの執筆/ディレクションを行う。
サプリメントアドバイザー、化粧品検定一級、薬事法管理者の有資格者チームの管理人。化粧品開発・プロモーションの実務経験を活かし、雑誌・WEBメディアの執筆/ディレクションを行う。