産後抜け毛・薄毛の原因と対策７つのポイント / シャンプーから育毛剤まで

出産は女性に大きな変化をもたらします。社会的には母になるという事、そして心身にも大きな変化が起こります。出産前から身体の変化への予備知識を備えている女性は多いと思います。しかし個人差も大きく、中にはそういった変化が大きなストレスになる事もあります。その中の一つに産後の抜け毛があります。あまつさえ、育児に翻弄される日々の中で予期せぬ大量の抜け毛に悩まされる事は、多大なストレスを与えます。

いったい産後の女性の身体には何が起きているのでしょうか。この産後脱毛症はたいていの場合回復します。しかし、女性にとって髪が薄くなるというのは非常にショックな事です。そのストレスは、育児にも自分自身にも良い影響を与えません。何が起きていて、どのように回復していくのか、また少しでも早く回復してほしいという望みはどうすれば叶うのか、助けとなるような知識をご紹介します。

産後の身体の中では何が起こっているの？

髪が抜けるというと男性ホルモンのイメージがあります。子供を産んで育てる時期に、女性は通常以上の女性ホルモンを分泌しているはずですが、産後はどうなるのでしょうか。女性ホルモンは、出産が近づくにつれ増加していきます。因みに女性ホルモンの一つ「エストロゲン」は抜け毛を防ぐ作用があり、男性より女性に薄毛が少ない要因となっています。

女性ホルモンは胎盤に蓄積されますが、出産により体外に排出されてしまいます。これまで通常以上に体内に女性ホルモンが存在していたのが、急激に減少してしまうのです。この女性ホルモンの変化が、毛髪にも影響を与えます。では女性ホルモンと毛髪は、どのように連動するのでしょうか。この仕組みを知れば、回復への安心感に繋がります。

女性ホルモンが毛髪へ与える影響

産前体内にある多量のエストロゲンは、本来なら寿命を迎えて抜け落ちるはずの毛を留めます。しかし、出産でエストロゲンが激減すると、それらの毛が一気に抜け落ちてしまう、これが産後の抜け毛の仕組みです。発毛機能そのものに問題があるわけではありません。髪の毛の通常のサイクルが一時的に狂っただけですから、また毛は生えてきます。通常のサイクルとは1本の髪の毛が生えてから抜けるまでの過程です。このサイクルを知っていると、新しい毛がどれくらいで生え揃うか、目安を知ることができます。

1本の髪の毛には、生えてきた毛が成長する「成長期」、成長が止まる「退行期」、抜け落ちてから次の毛が生えるまでの「休止期」、があります。「成長期」は3～5年と長く、産前の女性ホルモンはこの「成長期」を長く持続させます。そのため産前は抜け毛が減少します。しかし、産後ホルモンバランスが変化すると、維持された髪が「休止期」に入っていきます。「退行期」は3週間程度、「休止期」は3か月程度ですから、頭皮全体で抜け落ちて生えるまでの期間にある部位が増えて、薄くなっているわけです。

回復するまでにかかる時間は？

一時的に「休止期」の部位が増えても、また発毛すれば通常の頭髪を取り戻すことができます。「休止期」約3か月を経て、生えてきた髪が伸びるスピードは1日に平均0.35～0.4mmほどです。脱毛の起こる時期は産後2～3か月が多く、半年～1年で元の頭髪状態に戻るのが通常と言われています。毛髪に影響するエストロゲンも、月経の回復で妊娠前の通常のバランスに戻ります。

ただ、発毛は栄養状態や睡眠、ストレスなどが影響し、髪の成長スピードに関わります。また1年以上も回復が見られない場合や、脱毛状態がひどく地肌が透けて来たといった症状があれば、単純に産後のホルモン変化の影響だけではないかもしれません。産後は自己免疫に障害が出る場合もあり、この場合は脱毛や皮膚疾患として症状が現れることがあります。この場合は産婦人科や皮膚科に相談する必要があります。

回復のためのポイントは？

自然に回復するとはいえ、髪の毛を気にした生活を数か月続けるのは辛いという方もいらっしゃると思います。治るからと言って気にならないというわけではありません。なるべく早く回復したいならば、髪の成長スピードを促進するような生活習慣が一つのポイントになります。もう一つ、回復というより悪化させないために、心のメンテナンスにも気をつけたいところです。

お子様第一のこの時期、自身の事を気遣う余裕は限られてしまいますが、毛髪を健康にすることは自身の体調を整える事、延いてはお子様の健康にもつながります。以下に回復に役立つポイントをご紹介します。髪の毛は身体の中で、生命維持からは遠いパーツです。そのため、健康状態がてきめんに反映される部分でもあります。以下の基本的なポイントを満たしていなければ回復の遅延や悪化を招きかねませんので、どうぞご自身の健康の為にも基本を見直す機会にしてください。

育毛対策①十分な栄養は基本中の基本

特に授乳中のお母さんは、摂取した栄養がお子さんの栄養になります。しっかりと気を配っているかと思いますが、それでも、授乳は出産と同じく自身の身体を削ってお子様に与える状態です。栄養不足になりやすく、またどのお母さんも、きちんとした食事を用意する余裕が無くなりがちです。特に毛髪に関して積極的にとっていただきたい栄養素は、鉄、亜鉛、たんぱく質などです。

産後ダイエットを志すお母さんも増えているようですが、特に産後6か月は出産の影響が残っている時期です。身体に過酷な状況を与えていることになりかねません。健康な状態でも過酷なダイエットは脱毛を起こします。授乳中はもちろんの事、そうでなくても免疫力が落ちている場合がありますので、ダイエットは産後脱毛を深刻化させる要因になると知っておいてください。

育毛対策②成長ホルモンを味方につけて

夜泣きに追われ、お子様ペースの生活になるお母さんには難しい事ですが、発毛に睡眠は欠かせません。規則正しい生活は難しくとも、せめて限られた睡眠時に成長ホルモンを増加させる工夫をお勧めします。成長ホルモンには疲労回復や免疫増加、代謝増加など発毛促進以外にもありがたい作用がたくさんあります。恩恵を受けるべく、子育て中でもできる工夫があります。

まず大切なのが、寝る直前に食べない事、つまり血糖値を上げない事です。食べると眠くなりますが、入眠時に血糖値が低いことは必須条件です。また、寝る少し前に体温を一気にあげて、入眠時には下がった状態にする事も効果があります。寝る前のお風呂や軽く身体を動かす事、足湯などがお勧めです。食事後の血糖値を下げる事にも繋がります。

そして忙しい時こそ気をつけたいのは、灯りやパソコン、携帯などの光で睡眠に必要なリラックス状態に入りにくくする習慣です。また、ご主人の協力などで3時間はまとまった時間眠れるといいでしょう。

育毛対策③産後のストレスは髪にも大敵

産後のストレスは多くの方が抱える問題です。産後脱毛症に加えて、ストレスにより円形脱毛症を併発してしまう場合もあります。どうしても育児に追われて一人で悩みを抱え込みがちです。産後は先に述べた肉体的なストレス、そして精神的なストレス、環境の変化といったストレス要素が重なります。これまで以上に工夫して、ストレスの逃し方、自分の労わり方を考えなければいけません。

女性の身体は繊細で、ストレスも発毛に影響します。まずは自分だけで抱え込まず、頼れる先や話せる場所をなるべく確保しましょう。医師や自治体の育児支援、同じ産後の悩みを共有できる先に相談する事をためらわないでください。特に女性は「共感」が心の栄養になると言われています。核家族でご主人しか協力者が無い場合、女性特有の心理が伝わらない事もあります。ストレスは毛髪以外にも多くを蝕みます。

育毛対策④血行不良にも注目を

産後の悩みの一つが骨盤の歪みです。骨盤の歪みはひいては全身の血行不良を引き起こします。また、不規則な睡眠で自律神経が乱れる事も血行不良の原因になります。その他子宮機能の影響など、産後に血行が悪くなる要因はいくつかあります。一方、ヘアサイクルを促進したければ、頭皮の、そして全身の良好な血行は欠かせません。

髪の毛を作る栄養は、頭皮の毛細血管から運ばれます。上記に十分な栄養摂取をお勧めしましたが、この毛細血管の血流が悪ければ、せっかく摂取した栄養も効率的且つ十分に届きません。頭皮マッサージも良いですが、効果が出やすいのは全身の血行促進です。冷温浴など身体に負担のない方法や、無理の無い範囲での骨盤の矯正も有効です。

また、成長ホルモンの項でご紹介した睡眠前の工夫は、言い換えれば自律神経の調整法です。ストレス過多だと興奮状態が続く、つまり交感神経のスイッチが切り替わりにくくなります。リラックスモードの副交感神経に上手く切り替える方法を知っておくと、血行促進、産後鬱防止、ひいては健康な発毛促進にまでつながります。

育毛対策⑤育毛剤という選択肢は？

育毛剤は、上述した心身の状態を調整できた上で、プラスアルファの手助けを期待して使用を開始するのが良いかと思います。上述の対策は欠けると悪化の可能性もありますが、育毛剤は更に何かしておきたいという方にお勧めです。脱毛が続く時期にはどうしても不安がつのりますので、安心のためのプラスアルファと考えてもいいかもしれません。

育毛剤は3か月～半年以上使用して効果が実感できると考えて下さい。よって場合によっては自然の発毛と、育毛剤の効果がわかりにくいかと思います。自然に発毛が整う時期と同じだからです。育毛剤という選択肢を選ぶ上で注意していただきたいのが、1年以上脱毛が改善しないから、育毛剤を試すという発想です。その場合は、先に解決すべき重要な原因がある場合が考えられますから、自己判断せず病院に相談してください。病院については下記に詳細を加えます。

育毛対策⑥育毛剤の選び方を知って安全に育毛

育毛剤選びの注意点はまず成分への注意です。昨今女性の薄毛が増加していると言われ、女性用の育毛剤も増えています。一方手軽に家にある男性用の育毛剤を試す方も。効果の高い男性用の育毛薬には、女性への副作用がある、もしくは授乳中は禁忌というものもあります。一方で望めばこうした強い副作用のものが処方箋無しでも手に入ってしまいます。特に授乳中の方は、医師に確認するなど安全を確かめて使用してください。

ホルモン変化は皮膚の質を変えることもあります。なるべく安心なものを選びたいところですが、ネットで見かける機会も多いものでは「産後育毛剤angere」や「無添加育毛剤マイナチュレ」といった、産後や授乳中でも安心して使えるよう作られているものもあります。

因みに、医薬部外品とされているものは、医薬品より穏やかな何らかの効果もたらすと承認されたものです。もしどれがいいのか迷ったら、万が一の為に製造元が信用できるか、また周りの先輩お母さんなどに相談してみて判断するのがいいのではないでしょうか。

育毛対策⑦病院での治療も

先述したとおり、脱毛がひどい場合や、1年以上経っても続くとき、円形脱毛症を併発した時などにはまず病院を頼りましょう。出産の負担は女性の一生の健康に影響します。後々のリスクを抱えることの無いよう、積極的に医師の助けを得てください。髪の毛は健康状態の目安になります。まずは自分の心身含めた健康状態を客観的視点から確認しましょう。

薄毛に悩む女性人口の増加は、病院での女性脱毛治療の広がりも生みました。脱毛状態が酷い場合、病院での薄毛治療に取り組むことも可能です。頭皮の状況を診断してもらい、市販育毛剤より効果の強いものを個人の体質に併せて使用できます。産後脱毛で適用されるのは「パントガール」という内服薬です。数ある育毛薬の中で、副作用のリスクがなく、一定の研究成果も報告されています。

「無添加育毛剤マイナチュレ/株式会社レッドビジョン」　　120ml/5095円

無添加で授乳中でも使用可能な女性用育毛剤です。しかし心配な場合は医師に確認してください。敏感肌にも使い商品です。医薬部外品で、センブリエキス、グリチルリチン酸ジカリウム、酢酸DLαトコフェロールが有効成分です。

「産後育毛剤angere/アヴァンセ製薬(株)」　　120ml/7980円

産後脱毛に特化した育毛剤で、授乳中でも使えるよう作られました。産後脱毛経験者の要望に的を絞ってデザインなどにも配慮をしています。医薬部外品で、効果の認められた有効成分はセンブリエキス、グリチルリチン酸2K、ジフェンヒドラミンHCIです。

「薬用育毛剤リリィジュ/富士産業株式会社」　　45ml/3066円

自社で素材の収穫から製造まで行う育毛剤で、産後の使用も可能となっています。医薬品の育毛剤なども製造している会社です。医薬部外品で、センブリ抽出リキッド、β-グリチルレチン酸、ニコチン酸アミド、パントテルエチルエテールが有効成分です。