児童相談所職員が解説!相談方法から保護後の生活、当事者以外も電話OK
[公開日]2016/12/16[更新日]2017/03/28
何年も前から、世間では虐待や育児放棄などが話題に上がってくるようになりました。TVや新聞で残念な事件というのも定期的に取り上げられています。
「近所の子どもが毎晩のように泣き叫んでいる」「あざだらけの子どもを見かけた」など、気になる子どもはいませんか?
虐待されているんじゃないかと感じる子どもがいるという方、あるいは自分自身が虐待してしまっている、親から虐待を受けているという方は「児童相談所」に相談してください。
ただ、児童相談所って名前を知っていても、どんな所でどう相談したらいいのかわからない人が多いと思います。この記事では、実際に児童相談所で勤務していた筆者の経験をもとに、児童相談所の業務内容から相談の仕方、子どもを保護した後についてまでをまとめました。
筆者自身、虐待から逃れるために助けを求めてきた子どもを保護したこともあります。ぜひ、皆さんの一声で残念な事件が起こる前に、子どもたちを守りましょう!
児童相談所って、どんなところ?
児童相談所の存在意義を簡単に説明すると、子どもの生活に関する相談を受け、子どもが安心して暮らしていけるようサポートする機関と言えます。つまり、児童相談所の目的は、子どもを守ることです。
主な業務は「相談」と「対処」
児童相談所の業務内容としては、大きく分けて相談業務と対処業務です。
まず、相談業務ですが、多くの方がイメージする虐待に関することはもちろん、非行や育児不安など幅広いことに関する相談を受け付けています。
次に、対処業務ですが、子どもの保護から始まり、子どもやその親の指導、今後の進路決定などを行います。つまり、児童相談所は子どもが安心して暮らせる道を提案するのが主な業務ということです。
筆者がやっていた「夜間の生活指導と行動観察」
筆者自身は、主に夜間の生活指導と行動観察を行っていました。子どもの言動に問題があれば注意し、場合によっては記録を付けるといったことです。ただ、児童相談所というのは、基本的に保護児童の一時的な家という立ち位置の施設です。そのため、筆者のように児童相談所で働く職員は、保護児童を自身の子どもや兄妹のように考えて接します。
筆者自身、児童相談所で働いていた頃は、月の半分以上を所内で寝泊まりしていました。そのため、2歳〜5歳のように小さな子どもにご飯を食べさせ、添い寝をして一緒に眠るということがよくありました。
また、6歳〜12歳のような小学生頃の子どもであれば一緒にゲームをして遊んでいました。そして、13歳〜18歳のように大きな子どもであれば進路相談に乗ったり、勉強を見てあげたりもしていました。
どんな時に相談する所なのか?
虐待されている、しているとき
まず、児童相談所は「虐待している」「虐待されている」ときに相談する所です。中には、「児童相談所=虐待に対処する場所」と思っている人もいることでしょう。事実、筆者自身が児童相談所に勤務していた際にも、入所する子どものおよそ8割ほどは親からの虐待による保護というものでした。例えば、家庭内暴力(DV)や育児放棄(ネグレクト)などです。
虐待は、進行すると子どもの命に関わる事態に発展することもある危険な状態です。もし、自分が虐待している、または虐待されているのであればすぐに児童相談所に相談することをおすすめします。
家族が面倒をみれないとき
次に、児童相談所は「家族が面倒をみれない」ときに相談する所でもあります。例えば、両親が事故に遭い、長期で入院することになったという場合です。もちろん、親戚がいれば代わりに子どもの面倒を見るということも可能です。ただ、そういう親戚のいない両親の子どもの場合には、児童相談所が一時的に保護するということになります。
中には、お金に余裕がなくて生活に困っているという家庭もあるでしょう。そんなとき、子どもを守るためにもぜひ児童相談所に相談してみてください。
子どもが非行に走っているとき
次に、児童相談所は「子どもが非行に走っている」ときに相談する所でもあります。例えば、万引きや飲酒などの違法行為が治らない、家庭内暴力に困っているなどです。親として、子どものしつけは自分で行いたいという気持ちはあるのでしょう。そのため、基本的に子どもに問題があることで親から保護を求めるということはあまりないものです。
しかし、親にだって自分自身を守る権利があります。もし、自分の子どもの非行に悩んでいるのなら、児童相談所に相談だけでもしてみるのがいいですよ。
子どもに関する悩みならなんでもOK!
基本的に、児童相談所は子どもに関する悩みであればなんでも受け付けてくれます。なぜなら、些細な悩みから虐待やネグレクトなどの大きな問題につながる可能性があるからです。虐待やネグレクトで子どもが命を落とすということは、決して別世界の話ではないものです。最悪の事態になる前に早めに相談することが大切です。
誰でも相談して良いのか?相談の方法は?
「189」で誰でも電話相談OK
児童相談所には、一般的に夜間対応の職員が常駐しています。基本的に24時間365日電話で対応が可能です。事実、筆者が児童相談所に勤務していた頃、真夜中に電話が鳴り響くということが何度もありました。「相談したいけど、直接行くのは難しい」というのなら、迷わず電話してみてください。
警察の110番のように、児童相談所にも専用ダイヤルがあります。「189」(いちはやく)です。
児童相談所全国共通ダイヤルとは
虐待かもと思った時などに、すぐに児童相談所に通告・相談ができる全国共通の電話番号です。
「児童相談所全国共通ダイヤル」にかけるとお近くの児童相談所につながります。
通告・相談は、匿名で行うこともでき、通告・相談をした人、その内容に関する秘密は守られます。
児童相談所に駆け込んでも大丈夫!
児童相談所は子どもを保護し、問題に対して対処する機関です。子ども本人であれ、親であれ、子どもに関する問題を抱えているのなら迷わず駆け込むことをおすすめします。事実、筆者が児童相談所に勤務していた頃、夫から逃げてきたという母娘を保護したことがあります。「今すぐ逃げ出したいけど、どこにも行くあてがない」というのなら、児童相談所に相談するのがいいですよ。
どなたからの相談でも受け付けています!
児童相談所は、子どもに関する相談を受け付ける機関です。子どもに関するものであれば、当事者でなくても相談することができます。例えば、近所の人や学校の先生などです。「私は関係者じゃないし」と諦める前に、気になることがあるのならまずは児童相談所に相談してみてください。
身の回りで「虐待かも?」と思ったら相談!
「あの子、虐待されてるんじゃないの?」と思ったら、まずは相談してください。毎年のように、虐待によって子どもの命が失われています。反対に、周りからの相談によって救われた命も多いものです。皆さんの一言で子どもの命が救えるかもしれませんよ。
「近所の子が毎晩のように泣き叫んでいる」「クラスの子が毎日アザだらけで登校してくる」など、気になる子どもはいませんか?勘違いだったとしても、相談してみることが大切です。
相談した後はどうなるの?
児童相談所に相談すると、まずは子どもの状況についての事実確認が行われます。例えば、親子関係や生活環境などについてです。その後、もしこのままでは子どもの今度に悪影響が大きいと判断されれば、児童相談所内で保護されることとなります。ただし、これはあくまで一時保護です。
なので、保護された子どもは、今後の進路として親元に返されるか別の施設に移されるかが決められます。つまり、児童相談所は相談窓口であると同時に、一時保育施設でもあるということです。
周りの大人が子供を守ることが大切
筆者が児童相談所で勤務していた頃には、月に数十件もの相談が寄せられていました。ちなみに、そのおよそ8割が虐待についての相談です。筆者自身、両親から虐待されているということで相談に来た中学生の男の子の対応をしたことがあります。毎日のように両親から暴力を振るわれ、耐えられなくなったとのことでした。
上記の例は子ども本人からの相談ということですが、子どもからの相談というのは稀です。子どもというのは、どんなにひどい扱いを受けていたとしても親を最後まで守ろうとするものだからです。
だからこそ、周りの大人が子どもを守るということが大切です。自分には関係ないとしても、周りの子どもの異変に気付いたのだとしたら、ぜひ児童相談所に相談してください。
児童相談所に保護された後の生活は?
子ども保護までの基本的な流れ
児童相談所では、子どもを保護するために、まず情報収集を行います。子どもの生活環境についての聞き取り調査や立ち入り調査などです。特に児童相談所では、子ども自身への聞き取りを重視しています。十分に情報収集できたら、次は情報評価を行います。集めた情報から保護する必要があるかどうかを決めるためのものです。基本的に、どんな理由であれ保護されるというのは、子どもにとって大きな衝撃となります。だからこそ、児童相談所では安易に保護しないためにも情報評価を徹底しています。
情報評価により保護する必要があるとされれば、その子どもは実際に保護されます。保護された子どもは、次の進路が決定するまでの間、児童相談所内で生活することとなります。
突然、拉致のように無理に子どもを保護することがあるのか?
児童相談所は、虐待や育児放棄など子どもの生命に危険が及んでいる場合、強制的に保護することが可能です。ちなみに、保護される場合には、保護者はもちろん子どもの同意を得る必要はありません。これは、「保護」が行政執行の1つだからです。確かに、側から見ると拉致のように見えるかもしれませんね。しかし、子どもの命を守るために時には一刻を争うこともあります。
ただ、児童相談所側がその権利を濫用することがないように注意する必要があります。だからこそ、児童相談所では保護する前に十分な情報収集と情報評価を行っているのです。
子どもが保護される「基準」はあるのか?
児童相談所で保護される基準としては「子どもの生命に危険が及ぶと考えられる場合」と言えます。例えば、虐待や育児放棄などです。また、なんらかの理由で両親が子どもの面倒を見れなくなった場合にも保護することがあります。また、先述した通り、児童相談所はあくまで一時保護が基本です。なので、基本的に保護期間は2ヶ月程度とされています。事実、筆者が児童相談所に勤務していた頃、多くの子どもは数日から1週間ほどで次の進路を決めて退所していました。
ただ、中にはなかなか進路が決まらない子どももいます。そんな場合には、保護期間を延長することも可能です。
保護解除されるにはどんな基準があるのか?
親子の関係が改善された場合に保護解除となります。保護されるということは、親子関係になんらかの問題が起こっていることが多いものです。そんな状態で保護解除となっても、また保護される状況になる可能性は高いですよね。そこで、児童相談所では、保護した子どもの親との面談を頻繁に行います。そして、親に子どもを受け入れる準備ができたと判断すれば、子どもを返すために対応します。
また、子どもの受け入れ先が見つかった場合にも保護解除となります。先述した通り、保護される原因の多くは虐待や育児放棄などです。虐待や育児放棄する親に子どもを返すというのは、現実的に考えても難しいものです。
そのため、多くは親戚や児童福祉施設などが子どもを受け入れることとなります。児童相談所では、そんな子どもの親戚や児童福祉施設との間に入り、受け入れ準備を行います。
児童相談所の中で子供はどんな生活を送っているの?
まず、基本的に児童相談所というのは、すべての出入り口に鍵がかかるようになっていて、外部とは分けられています。これは、虐待や育児放棄など様々な事情を持つ子どもたちの身を守るためです。また、児童相談所内にはテレビやゲーム、漫画など娯楽が揃っています。ちなみに、施設によってはある程度のグランドがあり、日中は外で遊ぶということも可能です。庭の広い家というイメージですね。
そして、児童相談所から外に出れない子どもたちのために、平日の午前中には施設内で授業が行われます。いくら保護しているとはいえ、義務教育中の子どもから教育を取り上げることがないようにするための配慮です。
これだけで考えると、児童相談所はなんだか監獄のように感じられるかもしれません。事実、筆者が児童相談所で勤務していた頃、所内の息苦しさから脱走しようとする子どももいました。
もちろん、児童相談所では子どもたちが安全かつ快適に過ごせるよう常に配慮しています。それでも、これまで自由に過ごして来た子どもにすれば、限られた空間で共同生活するというのは息苦しさを感じることがあるのかもしれませんね。
どうすれば児童相談所の職員になれるのか
ちなみに、単純に児童相談所で職員として働きたいのであれば、補助職員という道があります。この補助職員というのは、特に資格も必要ないので、児童相談所で求人が出ていれば誰でも応募することが可能です。
ただ、正職員として働きたいのであれば、「児童福祉司」の資格が必要となります。この児童福祉司の資格は、福祉系の短大や大学で取ることができます。また、児童相談所に2年以上勤務していれば、児童福祉司の試験を受けることもできます。
もし児童福祉司の資格がないのであれば、まずは補助職員から始めましょう。2年間働いてから児童福祉司の資格を取得し、正職員を目指すというのがおすすめです。
ちなみに、単純に児童相談所で職員として働きたいのであれば、補助職員という道があります。この補助職員というのは、特に資格も必要ないので、児童相談所で求人が出ていれば誰でも応募することが可能です。
ただ、正職員として働きたいのであれば、「児童福祉司」の資格が必要となります。この児童福祉司の資格は、福祉系の短大や大学で取ることができます。また、児童相談所に2年以上勤務していれば、児童福祉司の試験を受けることもできます。
もし児童福祉司の資格がないのであれば、まずは補助職員から始めましょう。2年間働いてから児童福祉司の資格を取得し、正職員を目指すというのがおすすめです。
子供を守るために児童相談所を活用しよう
この記事では、児童相談所への相談方法や保護された子どもの生活について紹介してきました。何年も前から虐待や育児放棄がTVや新聞で頻繁に話題に上っています。残念な事件というのも決して珍しいものではありません。
児童相談所は、そんな残念な事件が起こらないよう子どもを守る機関です。ただ、児童相談所だけで把握できる子どもの数というのは決して多いとは言えないのが現実です。
だからこそ、当事者はもちろん周りからの相談を児童相談所は待っています。皆さんからのたった一言で子どもの命、未来が守れるかもしれません。
人付き合いが気薄とされる現在、「間違ってたら」と考えてしまうと思います。たとえ間違っていたとしても、少しでも気になる子どもがいるならぜひ児童相談所に相談することをおすすめします。