児童相談所職員が解説!「自分の子供が嫌い」と悩むママは意外と多い!子育てを楽しくするには?
[公開日]2016/12/09[更新日]2017/03/28
「もう嫌!」と育児を投げ出したくなったことはありませんか?
筆者は児童相談所に勤務していた経験があります。児童相談所では「自分の子どものことが嫌いになりそう」という悩みを持った多くの母親の相談に乗っていました。
男女平等とは言いつつも、育児となるとどうしても母親の負担は大きくなるものです。そんな中、「泣き止まない」「言うことを聞かない」「すぐ暴れる」など様々な育児の悩みを抱える母親は多くいることでしょう。
もし育児に悩んでいるのなら、子どもとの関わり方を少し変えてみるのがおすすめです。実は、少し関わり方を変えるだけでも、子どもとの関係が劇的に良くなることがありますよ。
筆者自身、児童相談所で出会った母子との関わりから、子どもとのより良い関係の築き方には常に悩んできました。この記事では、筆者の体験談をもとに、以下のことについてまとめています。
この記事を読んで、育児を楽しく有意義なものへと変える方向性を見つけていただければと思います。
実はたくさんいる「自分の子供を嫌いになる親」
「自分の子どもが嫌い」は珍しくない!
実は「自分の子供が嫌いになりそう」というレベルまで追い詰められ、子どもとの関係悪化に悩む母親というのは意外と多いものです。筆者が児童相談所に勤務していた際にも、子どもとの関係がうまくいかないことに悩む母親たちの相談には、これまで何度も乗ってきました。「自分はどうかしている」「自分の人格がおかしい」と自分を責める必要はありません。
本当に嫌いなら「何も感じない」
ただ、そうは言っても「なんで自分の子どもなのに嫌いになるの?」と不思議になることと思います。確かに、大切な我が子だから大好きであって当然だと考えますよね。
しかし、本当に相手のことを嫌いになると、人って、その相手に何も感じなくなるそうです。「好きの反対は無関心」ということですね。
もし今、自分の子どものことに対して、少しでも「なんで?」と悩みがあるのなら、それは子供と向き合っており、愛情がある証拠と言えるでしょう。
自分がどれだけ子どものことを思っているのかを自覚することが、子どもとの関係改善の第一歩です。
なぜ嫌いになる?どんな時に腹が立つか自己分析
なかなか泣き止まなくてうるさい時
どうにか泣き止まそうと奮闘しているのに、子どもがそんな頑張りを無視するかのように泣き声が聞こえ続ければイライラもしますよね。赤ちゃんなら夜泣きで睡眠不足になって苦痛を感じることもあるでしょう。ただ、よくよく冷静になってみると、小さな子どもほど感情表現の方法として泣くしかないことが多いというのに気づくことができると思います。抱っこしてほしい、お腹が空いた…などの感情の高ぶりをうまく表現できず、必死に伝えているだけなのです。
まずは、「子どもは泣くのが仕事」と割り切ってしまう必要があるでしょう。
一つひとつの動きが遅くてじれったい時
家事や育児、中には仕事まで持っている母親もいるでしょう。子どもの動きに合わせていたら時間が間に合わないということもありますよね?ついつい、「早くして!」と怒鳴りたくなる気持ちもわかります。
しかし、子どもは、様々な経験をもとに少しずつ早く動けるようになります。「子どもはゆっくりなもの」と子どものスピードを予測して動くのが大切ですね。
走り回って落ち着きがない時
家の中はもちろん、外出中に暴れ回られると「恥ずかしいから静かにして!」と思ってしまいますよね。特に、男の子はやんちゃだと思います。しかし、子どもは好奇心の塊と言える存在です。好奇心は子供にとって非常に大切なもので、例えば好奇心がなければ勉強を楽しむことはできません。
もちろん、周りの迷惑を考えてしつけけることは大切です。ただ、それ以上に「その元気をどうにか別の興味につなげられないかな」と考えてみるのがいいでしょう。
思う存分、暴れまわれる広い公園などの遊べる場所に積極的に連れ出し、フラストレーションを溜めさせないことも一つの手です。暴れて良い場所と暴れてはいけない場所とそうである理由を知る勉強にもなるでしょう。
下の子への態度が悪い時
心優しかった上の子が、下の子が生まれた途端に意地悪になると「どうして?」と戸惑いますよね。母親として、「お兄ちゃんでしょ」「お姉ちゃんでしょ」と上の子に我慢をさせることはどうしてもあります。しかし、上の子だって母親にはいつまでも甘えたいものです。
もし、下の子に意地悪するのなら「愛情不足かな?」と上の子が甘えられる環境作りを考えてみることをおすすめします。
「いや」と何でも拒否される時
誰にでも「イヤイヤ期」はあるものだとわかっていても、実際に経験すると「なんで言うことを聞いてくれないの?」と困りますよね。ただ、いわゆる「イヤイヤ期」と呼ばれるものは、子どもに自己主張という感情が増えた証拠と言えます。
この時期の心理的特徴から考えると、無理に言うことを聞かせるのではなく、「じゃあどうしたいの?」と一度はやりたいようにやらせてみるのがいいでしょう。
「ママいらない」と言われた時
毎日一緒に過ごす大切な子どもから、「ママいらない」なんて言われた日には落ち込みますよね。子どもはまだ言葉の使い方をよく知りません。一時の感情で、思い切ったことを言ってしまうこともあるでしょう。
「じゃあもう知らない!」と反発するのではなく、「お母さん悲しいな」と母親から素直に気持ちを伝えることで、子どもは間違いに気づくことができるでしょう。
べったりくっついて全然離れない時
急いでいる時など、四六時中一緒にいる上に、外出先でもずっと足にくっついてこられたら鬱陶しくなってしまう気持ちもわかります。ただ、外の世界に不安を抱く子どもにとって、母親は心から信頼できる道しるべのような存在です。
私たち大人だって、いきなり行ったことのない異国に行けば不安になりますよね。「子どもにとって家の外は異国と一緒」くらいの気持ちになれれば、子どもがくっついてくるのも納得できるのではないでしょうか。
旦那が育児に協力してくれない時
育児にばかり時間を取られて自分の時間が取れなくなれば、イライラしてしまいますよね。まして、その横で夫が寝転んでいたり、外に遊びに行っていたら怒りは頂点に達することもあるでしょう…。
だからといって、子どもにあたってしまったり、両親が不仲になるのは子どもの精神状態にもよくないものです。そんな時の対処法としては、思い切って周りに子どもを預け、リフレッシュの時間を取ってみるのがおすすめです。
勉強ができないと感じる時
周りの子どもが高得点を取っているのに、自分の子どもが低い点数だと「どうしてできないの?」と不安になりますよね。ただ、よくよく考えてみるとどの分野にだって得意な子もいれば不得意な子がいます。そして、人というのは得意な子を基準に見てしまうものです。無理に得意な子と比較するのではなく、「平均点が取れればいい」くらいに考えていれば、気持ちは楽になれますよ。
「こうあるべき!」と思ってはいませんか?
母親として、子どもの成長を考える上で「こうあるべき!」と思ってはいませんか?子どもが100人いれば100通りの成長があるものです。まずは、自分の子どもと他人の子どもを比較するのをできるだけやめることをおすすめします。「他の子なんて関係ない。この子は自分の子だから。」と思えるようになれば、案外イライラしなくなるものですよ。
成長によってポイントが違う!子供との関係を改善する方法
乳幼児:自分の時間を持つ
乳幼児ですから、定期的な授乳におむつの交換など少しも目が離せないことでしょう。しかし、常に子どものことばかりしていると、「自分は何をしているのだろう?」と不安になる瞬間が来るものです。子どもだけでなく、自分さえ嫌いになってしまうかもしれませんよ。
そうならないためには、1日30分だけでもいいので子どものことを忘れて自分のやりたいことをやってみてください。たった30分ではありますが、気持ちがリフレッシュされて子どもとの関係もよりよくなりますよ。
入園前:何でも1度やらせてみる
入園前の1歳児〜3歳児頃の子どもは、ちょうど「イヤイヤ期」に入り自分で何でもやりたくなります。そんな時期に、「やりなさい!」と指示したって余計に反発されるだけでしょう。それでは、「どうして早くできないの?」とストレスが溜まってしまいます。
それならいっそ、危なくないことであれば何でもやらせてみてください。案外、子どもを説得することを考えれば、やらせてみた方が時間はかからないものです。
幼稚園児:ゆっくり話を聞く
幼稚園頃の子どもは、言葉も流暢になり何でも話したがるものです。また、幼稚園という新しい世界に出た子どもにとって、毎日が話題でいっぱいです。まさに、口を開けば洪水のように話題が流れ出てくると思います。
そんな時は、「それで」「どうなったの?」と母親側から良き聞き手になることをおすすめします。話を聞けば聞くほど、子どもも母親の話も聞いてくれるようになるでしょう。
小学生:自立を受け入れる
小学校頃の子どもは、これまでより広い社会を経験して自己主張が強くなってきます。もちろん、母親から見ると小学校の子どもは、まだまだ小さく映るでしょう。しかし、すでに子どもの中には「自分でできる!」と自立心が生まれいるものです。
「これお手伝いしてくれる?」「これしてくれると助かるな」とお手伝いをさせてみてはいかがですか?子どもの自立を受け入れ伸ばしてあげると、それだけ母子の信頼関係も深くなりますよ。
中学生:心身の変化を理解する
中学生の子どもは、男女ともに二次性徴が始まります。また、一般的に情緒が芽生える時期とも言われています。本格的な反抗期を迎えることもあるでしょう。母親としても、子どもの急激な変化に対してついていけないこともあるでしょう。しかし、子どもだって自分の体の変化、心の変化に対して戸惑うものです。
そんな時は、自分が実際に中学生だった頃に困ったこと、親にして欲しかったことを思い出してみてください。大人へと成長する子供の理解者となれれば、それだけ子どもとの関係づくりもやりやすくなりますよ。
高校生:常に良き相談相手を心がける
高校生というのは、大学進学はもちろんその先の進路についてまで考える時期です。母親として子どもを心配するあまり、「勉強しなさい!」「ちゃんと考えているの?」とついつい上から目線で言いたくなる気持ちもわかります。ただ、母親に言われなくても高校生の子どもは、自分の将来について案外考えているものです。
それなら、「将来何になりたいの?」「これからどんな勉強がしていきたい?」と子どもの考えを聞いて、引き出してみてください。人生の先輩として良き相談相手となれれば、自然と子どもは母親のことを信頼してくれるでしょう。
自分一人で抱え込まないのが大事!
子どもとの関係がうまくいかないと「どうしたらいいの?」と悩むものです。自分の息子や娘を見ていたわけではない筆者でさえそうだったのですから、実際の親であるみなさんが悩むのは当然だと思います。しかし、だからといって一人で抱え込むのは止めましょう。親が子どもに対して敏感なように、子どもも親に対しては敏感です。親が我慢していれば、子どもはそのことを感じ取ってストレスとなる可能性もあります。
自分の周りを見渡してみてください。親や兄妹、先輩ママ友などの友達はもちろん行政機関やボランティア団体など、案外周りには相談できる相手がたくさんいます。子どもを大切にする為には、自分を大切にすることも大切です。
児童相談所で勤務していた頃の相談・解決エピソード
邪魔をしていたはずの子から出た「ママは僕が守る!」
3歳頃の男の子を連れた母親が児童相談所に相談にいらっしゃいました。子どもが自分の邪魔ばかりして困っているとお悩みでした。相談の最中、感極まった母親は思わず泣き出してしまいました。そんな時、それを見ていた子どもが母親がいじめられているとでも思ったのか「ママは僕が守る!」と筆者と母親の間に入りました。
このことから筆者は、「お母さんを助けようとしてるつもりなんじゃないか?」と考え、そのことを母親に聞きました。すると、母親は何か気づいたように晴れ晴れとした表情になりました。
話を聞いてみると、実際に子どもが邪魔するのはいつも家事をしている時だったそうです。その後、「お手伝いのルール」を決めることで母子の関係は良好なものとなりました。邪魔がしたかったのではなく、お母さんの手助けがしたかったんですね。
子どもというのは、基本的に母親の味方である場合が多いものです。子どもがなぜその行動をするのかを考えてみるだけで、問題は案外簡単に解決するものですよ。
親の言動を振り返るだけで関係が一変
小学校中学年の女の子を連れた母親が相談に来たことがあります。相談としては、子どもの暴力的な言動に困っているという内容です。事実その子どもは、筆者に対しても「うっせー」「死ね!」と言いながら、机を叩く蹴るなどを繰り返していました。母親としても、女の子として子どもの行動に悩んでの相談だったのでしょう。
しかし、筆者はその母親自体の言葉遣いがどこか荒々しいことに気づきました。そこで、筆者は母親に対して、普段から自分がどのように子どもに接していたのかを振り返ってもらいました。
すると、その母親の普段の言葉使いが子どもにうつっていただけだということがわかりました。そこで筆者から、母親に対して自分の言動から変えてみることを提案しました。
その後、その女の子は随分とおしとやかで優しい子になっていました。
子どもというのは、基本的に親の写し鏡のような存在です。子どもに正しく生きて欲しいと思うのなら、親が正しく生きるのが一番効果的な方法なのでしょう。
一人で抱え込まず、まずは相談しよう
この記事では、母子の関係について考えてみました。母親として、「言うことを聞いてくれない」「勉強できない」「すぐ暴れる」など悩みは多いことでしょう。
ただ、「自分だけ」と抱え込む必要はないと思います。筆者自身、実際に多くの母子の相談を聞いてきましたが、みんな同じような悩みを抱えていました。
子どものことを嫌いになる前に、「助けて!」と家族や友人に相談してみませんか?もし、それが難しいようなら、児童相談所や児童福祉施設などの相談窓口もあります。
誰かに話を聞いてもらうだけで、たとえ解決できなかったとしても気持ちは楽になります。子どもが元気に健全に成長する為には、まずは親が元気で健全であることが大切なのです。