脱毛サロンで火傷！慰謝料はもらえる？行政書士が教えるトラブル対処法

最近雑誌などで、エステサロンが行う「レーザー脱毛」の広告が目につきます。このようなエステサロンは、病院とは違って美容院のような雰囲気で、女性にとっては気軽に通える手軽さがあります。

しかし、脱毛サロンの施術が原因で、火傷や水ぶくれなどの被害を受けたという相談が、相談機関等に多く寄せられています。

実際に脱毛の施術によって、火傷を負うようなことがあった場合、どのような対処をしたらいいのでしょうか？いくつかの事例を挙げながら、ご説明したいと思います。

脱毛サロンでのやけどで慰謝料はもらえるのか？

他人から危害を加えられたり、あるいは交通事故にあってケガをしたりした場合、慰謝料」の問題が出てきます。

何気なく日常的に慰謝料という言葉が使われていますが、それでは「慰謝料って何？」と問われた時に、法律関係者以外で正確に答えられる人はかなりの少数派です。

そこで、まず「慰謝料とは何か」から考えてみましょう。

慰謝料は精神的損害に対する損害賠償金

慰謝料とは、端的に言えば、「生命・身体・自由・名誉・貞操などが不法に侵害された場合の精神的損害に対する損害賠償金」ということになります。

例えば、ある人が交通事故に遭ってけがをした場合、治療費やけがが元で仕事ができなかった場合の補償は、慰謝料には当たりません。慰謝料は、あくまでも「精神的損害」に対する損害賠償だからです。

この場合の慰謝料は、けがを負った時の恐怖、治療中の苦痛等について、特定の算定方法（判例等）で計算を行うことになります。

脱毛サロンのコース料金の返金は可能か？

施術の途中で火傷を負ってしまった場合、施術そのものを中断・中止する場合もあります。

その際に心配になるのは、料金はどうなるのかということです。前払で全額支払っていた場合、慰謝料や治療費は別として、残りの回数に見合う料金の返還を求める必要があります。

ただ、施術前に説明を受け、施術内容や料金に納得して契約を結んだ場合でも、正式な「契約書」等を取り交わしていないケースは多くありません。

このような場合、途中で事故が発生し、中途解約を行うことを想定していませんから、当然「返金」についての話をしていない場合が一般的でしょう。

常識的に考えれば、最低限残りの回数に見合う料金が返還されるはずですが、色々な理屈を述べて返金に応じないサロンもあるかもしれません。その際には、返事を保留して、相談機関（消費生活センター等）に相談してみましょう。

火傷の部位によって金額の差は生じる

ところで、火傷の部位によって、慰謝料に差は出るのでしょうか？脱毛を行う部位としては、わき、脚、デリケートゾーン、顔、腕、ボディ（背中、お腹）等が代表的な所です。

一つの考え方としては、通常の生活で見える部位と見えない部位とでは、当然慰謝料の額は変わってきます。例えば、上記の部位で言えば、顔が最高額となり、次に腕、脚という順になってきます。

また、被害者の職業や職種によっても変わってくるはずです。例えば、顔や腕に火傷を負った人の職種が会社の受付係であった場合には、仕事への影響を考えた上で、慰謝料が算定されるべきです。

脱毛サロンのやけどで慰謝料を請求することができる理由

慰謝料をもらえる場合ともらえない場合について説明する前に、「なぜ慰謝料を請求できるのか」を考えてみましょう。少々難しい法律の話が出てきますが、分かりやすくご説明します。

人と人に係る権利・義務を定めた法律が、民法です。人には「法人」、つまり会社も入りますので、人と会社、会社と会社との権利・義務も民法が定めています。

その民法第709条には「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」とあります。

これを分かりやすく言い換えると、自分の意思でわざと、あるいはうっかり失敗して、他人の権利や利益を侵した人は、発生した損害を賠償しなければならない、ということです。

つまり、自分の執った行動で、相手に損害を与えた場合、その損害を償わなければならないということです。



併せて民法第710条では、「他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれかであるを問わず、前条（709条）の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産権以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない」とあります。

少々長い条文ですが、つまり「財産権以外の損害」、つまり「精神的苦痛」に対しても、損害を賠償しなければならないと述べています。

ここに、脱毛サロンで施術によって火傷を負った場合に、慰謝料を請求できる理由を見ることができます。

慰謝料を請求するために必要な４つの条件

慰謝料を請求するためには、次の４つの要件が必要となります。

施術を行ったスタッフの行為そのものが、「わざと」か「うっかり」かのどちらかでないといけないことを示しています。

十分注意した場合の行為で火傷を負わせた場合には、理屈の上では、責任を負わない、あるいは損害賠償の額が軽減される可能性があります。

直接被害者が被害を受けたことに対して責任を負わなければいけないことを示しています。

被害者以外の損害については、責任を負う必要はありません。

では、現に損害が発生していないと、責任を負う必要はないということを示しています。つまり、診断書等で損害が起こったことを証明しなければなりません。

スタッフの行った行為と損害とに因果関係が必要であることを示しています。

例えば、施術後数ヶ月経って皮膚に何らかの異常がある場合でも、それによってすぐに損害賠償を請求できるわけではないことを示しています。

もし請求するのであれば、施術と皮膚の異常に因果関係があることを客観的に証明する必要があります。

施術中にやけどトラブル！当日のケアから慰謝料請求までの流れ

脱毛サロンで施術中に火傷を負った場合、次のような手順で慰謝料を請求します。

施術中に強い痛みや違和感があったら、直ちに施術を中止してください。そして、痛みや違和感のある個所を確認します。スタッフの方にその旨を伝え、冷却ジェルを塗り、専用のクリームを出してもらいましょう。

痛み等が落ち着いても、再度肌をチェックします。その際に、スタッフ立ち合いの下で行ってください。

また、可能であれば、該当の箇所をスマホ等で写真を撮っておくことをお勧めします。家に帰って痛み違和感があった場合も同じく、肌をチェックして、何時頃のどのような痛みや違和感があったかを記録し、写真を撮っておきます。

痛みがなかなか治まらない、あるいは明らかに肌に異常が生じた場合は、今後の施術を中止する旨を、できればサロンの責任者に伝えます。併せて、サロンが提携している病院等を紹介してもらい、治療に行く旨を伝えます。

病院に行って診察を受けますが、できれば施術の方法や回数、何回目でこのような症状になったか等を前もって記録しておき、医師に伝えましょう。診察を受けたら、「診断書」を書いてもらいます。

診断書を受け取ったら、できるだけ早くサロンに行くようにします。できれば、担当者と責任者に直接話す方がいいので、事前に電話連絡をして、空いている時間を確認することをお勧めします。

もし、2人同時に面会できる時間が取れそうもない時には、責任者だけでも会えるように設定してもらいましょう。

具体的な話し合いとしては、治療・通院に係る費用、代金の返還、そして慰謝料についての話をします。ただ、ここでは、これらの費用等について、支払う姿勢の有無を確認します。

サロンが支払う姿勢をある程度示してくれた場合には、次には具体的な金額を決めていくことになります。しかし、その姿勢が感じられない場合には、消費生活センターに相談してみましょう。

消費生活センターは、消費者が被害を受けた時にサロンへの聴取や指導をする機関です。費用もかかりませんから、手軽に相談できます。

消費生活センターに相談しても、なかなか話が進まない場合には、弁護士に相談しましょう。弁護士と言っても、すぐに裁判になるのではなく、被害者の代理人として治療費、損害賠償、慰謝料の交渉をしてくれます。

知り合いに弁護士がいない場合でも、地元の弁護士会に連絡をして、専門の弁護士を紹介してもらいましょう。

慰謝料を請求可能にするための注意点とは？

慰謝料を請求できるためには、次のような注意点があります。
契約の際に、契約書や同意書を交わすサロンは少数派だと思いますが、もしあればそこに書かれている規約や規定を確認し、きちんと保存しておきます

今までいくら支払ったかが第三者にもわかるように、日付順位保存しておきましょう。

今まで受けた施術の回数、日付、所要時間、施術内容等をメモで保存しておきます。併せて、写真も可能な限り多く残しておきます。
特に自分だけで、サロンと話をする際には、自分から金額を提示しないようにします。

最初に相場より低い金額を提示した場合には、それが基準になってしまい、最終的にそれよりもさらに低い金額で妥協せざるを得なくなる場合があります。金額の提示は、消費生活センターや弁護士に相談した後でも十分です。

脱毛サロンの施術で火傷する３つの原因

脱毛サロンで火傷を起こす可能性がある事例は、次のとおりです。肌は人によって性質が異なるので、施術前にはカウンセリングを受け、担当者と施術方法等を打ち合わせておきたいものです。

原因１：火傷を起こしやすい３つの脱毛方法

脱毛方法には、大きく分けて、光脱毛、レーザー脱毛、ニードル脱毛の3つがあります。

光脱毛

レーザー脱毛

ニードル脱毛

原因２：火傷を起こしやすい部位は日焼けした箇所

光脱毛やレーザー脱毛は、光やレーザー黒い色素に反応するという性質も持っています。ですから、日焼けをした肌の部分が火傷をしやすいという傾向にあります。

その意味では、ヒジ下がまず挙げられます。この部分は、日常的に日光にさらされていますから、知らず知らずのうちに日焼けをしています。さらに皮脂の分泌が少なく、皮膚細胞の入れ替わりも遅いので、仮に火傷をしても治りが遅いという特徴があります。

原因３：火傷をしやすい肌の状態

一般的に脱毛は、光線を利用して毛根に熱を加えますから、肌に負担をかけることになります。

従って、施術後はしっかりと冷やしたり保湿を行ったりすることが大切です。これを怠ると、赤いままだったり、熱を持ったままだったりします。これが後々炎症等の原因になりますので、注意が必要です。

まとめ：サロン担当者との意思疎通がトラブル回避のポイント

脱毛は、ひと頃に比べて手軽になりました。そのおかげで、脱毛サロンに通う人も増えているのですが、一方で火傷を負い、悩む人も少なくありません。

サロンの担当者と十分に意思疎通を行うことが、トラブル回避の一つの方法です。もし、火傷を負うようなことがあれば、客観的証拠を示して、誠意ある対応を求めましょう。
　
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