水質検査機関100人に聞いた「私が浄水器を使わない理由」水道水の塩素除去は危険!
[公開日]2018/09/21[更新日]2018/10/02
私は5年半ほど飲料水メーカーで水質分析官として勤務していました。
飲料水メーカーでは、自社で製造した飲み水の質を詳しく知るために水質検査機関の方に水を提出し、水質に問題がないかチェックしてもらっていました。
個人的には、水質検査機関の方こそが、日本で最も中立的に水に対する専門的な意見が言える方なのではないかと考えています。
そこで、100名以上の国に認められている水質検査機関の専門家の方にお話を伺いました。
結果、一般の方と比べ、浄水器を使っている方が極端に少ないことがわかりました。
水のプロ中のプロである水質検査機関の方々がなぜ浄水器を使わないのか・・・。順を追って解説します。
水質検査機関で勤務する方の7割が水道水をそのまま飲む
筆者は以前、日本中の水質検査機関で働く100名の方々に普段の飲み水についてお尋ねする企画を実施しました。
102名の方との直接お話しさせていただくことができ、普段の飲み水に何を使っているのか、というデータをまとめることができました。
調査時期:2018年9月
調査対象:水質検査機関の会社、財団法人等で勤務される職員の方
取材方法:電話取材、メール取材
調査対象:水質検査機関の会社、財団法人等で勤務される職員の方
取材方法:電話取材、メール取材
この結果を東京都民と比較すると、以下のような差が出ます。
東京都民データ出典:東京都水道局「水道事業に対するお客さま満足度調査」(H26)
水質検査機関の方々には水道水の安全を確認してきた誇りがあった
水道の検査項目は、一般細菌や大腸菌、ph他51項目に及び、水質検査機関の方々はそれらを検査してきており、日本中の誰よりも水道水の安全性を知る方々です。「各水道局が苦労して安全な水道水を作っているところを見てきているから」というような生々しい声が聞け、水道水が厳しい基準で管理され、そのまま飲めるようになっている日本の素晴らしさを実感しました。世界に誇れますね。
詳しい調査結果はこちら
水質検査機関の職員は浄水器を使わない人が多い事実
東京都民は浄水器の水を飲む方が28.7%いるのに対し、水質検査機関の方々は10.7%と大きな差が見られます。「水質検査機関の方々が水道水を安全だ!」と信じて疑わないのはわかりますが、それ以上に良い水を作る浄水器をあえて利用しないのは何故なのでしょうか?
浄水器を使ったら、水道水がもっとキレイになって、おいしくなるんだから、使えばいいのに・・・。意地張ってるのかな・・・
こんにちは!「アンチエイジングの神様」管理人の安藤美和子です。タカシマくんが調べたところ、そこにはこれから浄水器を選ぼうとしている人も頭に入れておくべき浄水器の秘密があったの。引き続き、タカシマくんのレポートを読んでみましょう。
水質検査機関の方々は、なぜ自宅に浄水器を設置しないのか?
100人以上の方々にインタビューしたので、たくさんのお話を聞くことができました。
「水道水は安全なので、浄水器をつける必要はない」と皆さんおっしゃいます。
水道水は本当に安心して良い水なんだ・・・と改めて思いました。
しかし、こうも思いました。
水質検査機関の方々が「良い水だ!」と太鼓判を押す水道水。
でも「それだけ良い水が水道から出ているのなら、それをさらにキレイにした浄水器の水は最高なんじゃないか?」という考え方もできるのではないでしょうか。
水質検査機関の方々は「このキレイで安心できる水道水を、自宅でさらに良い水にして飲みたいなぁ」とは思わないのでしょうか?
そこで、電話でさらに深く突っ込んで、浄水器をあえて使わないのは何故なのかお尋ねしてみました。
浄水器を設置する「リスク」
水質検査機関の方々に単刀直入に「どうして浄水器を使わないんですか?」と質問してみたところ、大きく分類して二つの回答をいただきました。
メンテナンスをしないと逆に悪い水が出てきてしまうから
筆者が飲料水メーカーで水質分析官として勤務していた頃、希望された方のご家庭に訪問し、浄水器の水にどれくらいの不純物が入っているのかチェックをして、ppmの数値でご説明しながら、相談に応じていました。
浄水器のフィルター交換や定期的なお掃除をマメにされている方は少数派でした。
各浄水器メーカーが浄水器に付属している取扱説明書を読むと、フィルター交換の重要性や、定期的なお掃除の方法まで細かくアフターケアのやり方や注意点が記載されています。
新品の歯ブラシで定期的に掃除するように・・・などと書かれているのですが、なかなかそこまではできないですよね・・・。
自宅で完璧なメンテナンスがやれる自信がないのは、水質検査機関で働くプロの方々も例外ではないんですね。
塩素を取り除いてしまうのは危ないから
「水道水から塩素を取り除いて、消毒効果をなくすのは危ないことだ」という認識が日本でいちばん強いのは、水質検査機関の方々ではないかと思います。
筆者も一応、水を仕事にしていた「水のプロ」ではありましたが、水質検査機関の方々とは見方が違っていました。
水道水の塩素には細菌を殺菌する安全性というメリットがある代わりに、臭いや発がん性物質を生成するといったデメリットが共存しているという認識でした。
浄水器メーカーの方、ミネラルウォーターのメーカーの方など、一般的に飲み水の仕事に従事されている方は大体そんな認識ではないかと思います。その中でも「塩素はメリットが多い」「塩素はデメリットが多い」という部分は、飲み水の仕事に従事される方でも意見が分かれるところでした。
しかし、今回の調査では水質検査機関の方々は100人が100人とも口を揃えて「水道水から塩素を取り除くことにはリスクがある」という話を強めにされており「水道水でも、浄水器で塩素を除去して飲むとおいしいから良いですよ」と手放しにオススメする方は一人もいませんでした。ここまで塩素の重要性を強調されるとは私も驚きました。
水道水の「塩素」は悪者じゃない!
塩素といえば、筆者は真っ先にプールのあの臭いのイメージです。塩素には殺菌力があるので、殺菌消毒の目的で使われます。塩素は皮膚にも影響を与えるとも言われ、アトピー性皮膚炎の方は塩素が入ったお湯のお風呂に入るとピリピリするので、シャワーヘッドに浄水器をつけたりもされるそうです。
そうした話を聞くと、髪や肌に良くないイメージ、体に良くないイメージが湧いてきますよね。
水質検査機関の方々のお話を聞くと、世間で塩素や塩素臭が悪者にされてしまっている現状への嘆きが聞こえてきました。
水質検査機関の方々の中には「水を飲んで塩素の臭いがしないことに不安を覚え、逆に気持ち悪くなる」という方もいらっしゃいました。
「塩素が入っているからこそ安心」ということを身を持って知っているからこその話だと思います。
塩素を抜いた水を保管するのは危ない
塩素を抜くことにより、水質検査機関の方が一番心配してらっしゃるのはやはり雑菌の繁殖です。
麦茶にしろ、水にしろ、冷蔵庫に入れておいたとしても2〜3日で飲みきるようにした方が良いようです。
ちなみに塩素は沸騰することで揮発させることができます。何分沸騰させれば良いかというと、15分〜20分程度です。
筆者としては、飲む前にレモンを入れるのがオススメです。ビタミンCは水道水中の塩素を壊して中和する性質を持っており、水中の塩素を飛ばすことができます。
また、金魚を飼っている方などはご存知かと思いますが、汲んだ水を1~2日放置しておくと、塩素が飛びます。
浄水器を使わずとも、必要に応じてカルキ抜きは可能です。ただ、塩素を取り除いた水は早めに使い切ってくださいね。
「浄水器をつける」=「もっと良い水ができる」ではない
浄水器をつけると、水道水がより良くなると思うのが世間の常識だと思います。しかし、水質検査機関の方から言わせれば「そうとは限らない」ということです。
浄水器を設置するときはこれらのリスクをよく理解し、設置した後の管理までしっかりと考えて設置しなければなりませんね。
台所に浄水器をつけたら、口にする水がより安全になると漠然と思っていたけど、知らない間にたくさんのリスクを負っていて、一概にそうとも言えないのね。よく考えないといけないなあ。
浄水器を設置すると、水質はどう変化するのか?
浄水器によって、水道水の塩素を抜くことがリスクを伴う行為であることはよくわかりました。
ただ、リスクはあれど、対策は十分に可能です。設置後のメンテナンスもきちんと実施し、浄水器を通した水を早く飲みきるようにすれば、浄水器だって安全に使えるというわけです。
では、浄水器をきちんと安全に使用した場合、浄水器と水道水の水ではどれほどの違いがあるのでしょうか。
それこそ、浄水器の水と水道水の水で水質検査してもらって、どれほどの差があるか調べてもらったたら良いんじゃないの?そしたら、浄水器がどれくらい水の汚れを取っているのかわかるよね!
確かにそうすれば成分の比較ができて、違いが明確にわかりそうよね。でも、そうもいかないみたいなの・・・。詳しくはタカシマくんが調べてきているから、レポートを見てみましょう。
浄水器の水と水道水の水を水質検査すれば違いが出るのか?
浄水器の水と原水の水道水の水を水質検査に出すと、違いが出るかどうか、水質検査機関の方にご意見をうかがいました。しかし、どの水質検査機関でも「残留塩素くらいしか違いは出ないのではないか」と言われてしまいました。
ちなみに残留塩素については、水に塩素が含まれているかどうか簡単に測定できる検査キットが一般家庭向けにも販売されており、簡単にチェックすることが可能です。
そうなれば、わざわざ検査に出す意味はありません。それにしても、なぜ残留塩素くらいしか違いがわからないのでしょうか?
これは何も「浄水器がインチキだ」ということではありません。この秘密は浄水器ではなく、水道水の水質にあります。
水道水は私たちが思っている以上に安全
水質検査機関の方になぜ違いが出ないのか、もう少し詳しく教えて貰ったところ、以下のようなお答えをいただきました。
浄水器の性能が低いのではなく、どんなに浄水器の性能が高くても、元の水の水道水がキレイすぎるからわからないという指摘です。
例えるなら「衣類用洗剤の汚れの落ち具合が見たかったら、真っ白のTシャツよりもシミまみれのTシャツの方が良いですよ」という単純な話です。
水道局が責任を持って管理するのは、各世帯の敷地に入る前までです。もし、古い住居であったりして、水道管が古く、蛇口から出る水の水質が悪くなっていれば話は別です。(そもそも水道水でなく、井戸水の場合も同じ)
そうした異常な状態ではなく、正常に供給されている水道水なら、浄水器の水と比べて水質検査を行っても、残留塩素くらいしか違いは分からないのだそうです。
ちなみに水質検査機関の方でも浄水器を使用している方もいらっしゃいますが、全員がおいしい料理やおいしい飲み物を作るために「塩素を除去する」ことを目的にした方々でした。「水道水の中の物質を除去すること」を目的に浄水器を設置している方は、水質検査機関の職員の方の中には一人もいませんでした。
水道水に含まれているとされるトリハロメタンなどの発がん性物質は?
浄水場で塩素を注入した際に、水中の有機物に反応して生成されるのがトリハロメタンです。トリハロメタンには発がん性が指摘され、有害物質として認知されています。
浄水器のパッケージで「除去できます」と大きく謳われていることも多いので、聞いたことがあるのではないでしょうか。
この水道水中に含まれるトリハロメタンについても、お尋ねしてみました。水質検査機関の方はこのように話してらっしゃいます。
トリハロメタンの量に関しても、厚生労働省が定めている水道水の水質基準で「0.1mg/l以下」と定めており、今、日本各地のどんなにマズイと思われている水道水の中にも、トリハロメタンは1リットルに0.1mgも入っていないことになります。
水道水の水質基準は、人間が一生涯(70年間)に渡り、水道水を毎日2リットル飲用したとしても健康に影響を与えない水質を考慮し、設定されています。かなり厳しい数値と言えますね。
トリハロメタンに限らず、水道水には51項目にも及ぶ水質基準があり、各水道局で厳しくチェックされています。お住いの地域の水質検査の結果は各自治体のホームページなどで公開されていますので、心配な方は確認されることをお勧めします。
ちなみに私が住んでいる地域の水道水の総トリハロメタンは「0.17mg/l」で、基準値を大幅に下回っていました。元から大して入っていないものに、多額な費用をかけて取り除こうとするのは無駄に思えます。
浄水器を購入する前に知っておいて欲しいことのまとめ
今回の水質検査機関の方々への調査を通じ、浄水器を購入する前に知っておくべき重要な事実が3点わかりました。
浄水器の設置には衛生管理と塩素除去のリスクが伴う
浄水器の効果を水質検査しても、残留塩素の差くらいしかわからない
水道水は私たちが思っている以上にきれい
なんとなく浄水器を設置するのではなく、水や浄水器の仕組みについて正しい知識を持って水選びを行い、皆様がより豊かな水ライフを満喫されることを心より祈っております。